我が国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して先に承認されたファイザー社のワクチンに続いて、5月21日にモデルナ社とアストラゼネカ社のワクチンが承認されました。モデルナ社のワクチン(mRNA-1273)は、5月24日から始まった東京と大阪、仙台などの大規模接種会場で使われ始めましたが、ファイザー社のワクチン(BNT162b2)とどこが同じで、どこが違う(特に副反応)のでしょうか?
mRNA-1273は、BNT162b2と同じmRNAワクチンです。ワクチンの有効性を表すワクチン効果(未接種集団と比べて接種集団で感染発症をどれだけ減らせるか?を表す比率)は約94%と、BNT162b2の95%と同等です。免疫を惹起する力(免疫原性)は同等と見てよいようですが、副反応の程度は少し違うようです。Chapin-Bardalesら(1)が、2つのワクチンによる局所反応と全身反応の詳細を報告しています。
CDC(米国疾病管理予防センター)に所属する彼らのチームは、CDCが新型コロナワクチン接種プログラムのために構築した安全監視システム(v-safe)を用い、2020年12月14日~2021年2月28日の間に、v-safeへの登録者が各ワクチン接種後の0~7日目に自己申告した症状を収集して解析しました。なお、米国では2021年2月21日までに4,600万人以上がmRNAワクチンを1回以上接種し、その内364万人がv-safeに登録されていました。
副反応の種類はモデルナ社のmRNA-1273とファイザー社のBNT162b2で同じであり、いずれも2回目の方が副反応は多く見られました。主なものを個々に見ると、2回目接種後には悪寒(40.0% vs 22.7%:前者がmRNA-1273、後者がBNT162b2、以下同)、発熱(37.6% vs 21.5%)、筋肉痛(51.4% vs 36.8%)、頭痛(53.2% vs 40.4%)、倦怠感(60.0% vs 47.8%)、接種部位疼痛(78.3% vs 66.5%)、関節痛(31.5% vs 19.9%)と、いずれもmRNA-1273の方が高い比率でしたが、ほとんどが接種当日から翌日に出現し、短期間に消失するものです。
mRNA-1273の方が反応原性は高いと言えるようですが、副反応は体内で免疫が産生されている証しですから、重大なものでない限り、むしろ歓迎すべきことなのかもしれません。もちろん、副反応は、性別や年齢、人種、その他の要因によって偏る可能性もありますが、この調査は90万人規模のものであり、極端な偏りはないと思われます。そして、医療従事者は、ワクチン接種者に具体的な副反応の症状をあらかじめ伝え、副反応は接種当日から翌日に出現しやすいものの、短期間で消失することも伝えておく必要があります。
(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)
〔文献〕
(1)Chapin-Bardales J et al:Reactogenicity following receipt of mRNA-based COVID-19 vaccines. JAMA. Published online April 5, 2021. doi:10.1001/jama.2021.5374