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2021.05.28 病原体

2回目に異なるコロナワクチンを接種しても大丈夫? 著者:渡辺 彰

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンは、2021年5月21日にアストラゼネカ社のワクチン(ChaAdOx1、以下ChAd)とモデルナ社のワクチン(mRNA-1273)が承認され、ファイザー社のワクチン(BNT162b2、以下BNT)と合わせて3種類となりましたが、いずれも2回接種が原則となっています。国内では、国の大規模接種や自治体ごとの集団接種と個別接種などで予約が重複する可能性があり、2回目に誤って1回目とは異なるワクチンを打ってしまう事例も出てきそうです。その時の反応や安全性はどうなるのでしょうか?

ChAdを多く使用しているヨーロッパでは、極めて稀ですが血小板減少を伴う血栓症の事例が報告されたことを受け、2回目には他のワクチンを受けるよう一時的に推奨した国もあります。2回目に異なるワクチンを接種した時の副反応、免疫原性、ワクチン効果などがどうなるのか? については、万が一の事態に備えて知っておく必要があります。その副反応については、2021年5月12日のLancet誌オンライン版に英国からの報告(1)が載りました。

この研究に参加したボランティア(募集は2021年2月11日~2月26日)はランダムに、2回とも同じワクチンを接種する2つの群(ChAd/ChAdあるいはBNT/BNT)と、2回目は異なるワクチンを接種する2つの群(ChAd/BNTあるいはBNT/ChAd)の計4群に分けられ、さらにそれぞれが4週間または12週間空けてワクチンが2回接種されたので、計8群に分かれています。それぞれの接種後に副反応と各種血液・生化学検査成績が集計されましたが、今回は接種間隔を4週間空けた4つの群に関する報告であり、初回接種を受けた463名(年齢中央値は57歳、女性が46%)の内、461名が2回目の接種を受けています。

2回とも同じワクチンを接種した群では、概ねChAdでは1回目接種後の副反応の出方が強く、BNTでは2回目接種後のほうが強いという結果でした。異なるワクチンを接種した2つの群では、それらと比べて、どちらも2回目接種後に副反応の出方が強く見られました。例えば、熱っぽさについてはChAd/BNTで34%、BNT/ChAdで41%でしたが、ChAd/ChAdで10%、BNT/BNTで21%でした。悪寒、倦怠感、頭痛、関節痛、疲労感、筋肉痛なども同様の傾向でした。血液・生化学検査成績については、2回とも同じワクチンを接種した群と、異なるワクチンを接種した群で類似していた、と報告しています。

今後、mRNA-1273などを加えた検討や、免疫学的な結果が報告される予定とのことですが、同じワクチンの接種と遜色のない免疫原性が得られるか、期待されるところです。

(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)

〔文献〕
(1)Shaw RH et al:Heterologous prime-boost COVID-19 vaccination: initial reactogenicity data. www.thelancet.com published online May 12, 2021 https://doi.org/10.1016/ S0140-6736(21)01115-6.

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授
公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。

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