感染対策のポータルサイト「感染対策Online」
運営会社: Van Medical
2020.08.13 病原体

行楽地・サービスエリア訪問 行楽地でコロナうつる?―夏とレジャーとコロナ対策 著者:矢野 邦夫

 

週末や休暇時には行楽地に行く人も多いと思います。それでは行楽地で新型コロナウイルスに感染するリスクにはどのようなものがあるのでしょうか? まず、このウイルスは感染力が弱いことを知ってください。このようなことを言うと、「東京や大阪などの大都市では数百人という人々が毎日感染しているし、各地域ではクラスター(感染者集団)が発生しているじゃないか」と怒られるかもしれません。それでも感染力は弱いと断じたいと思います。

このウイルスは空気感染しません。飛沫感染します。「飛沫」は1mの飛行距離があるので、感染者から1m未満で、マスクを着用せずに、15分以上一緒にいると感染する可能性が高まります。それではどの程度の感染力かというと、濃厚接触者であっても5%程度が感染するに過ぎません(1)。すなわち、100人中5人のみが感染し、残りの95人は感染しないのです。一緒に食事をすると、15分以上の濃厚接触となるので感染する割合は増加しますが、それでも7%です。もちろん、同居家族であれば24時間、寝食を一緒にしていることから、感染率は10~40%となります。

行楽地では他の人々と同居家族のように濃厚接触をすることはありません。最近は、すべての人々がマスクを着用しているので、なかなか感染しにくくなっています。しかし、マスクを取り外したときに、1m以内に他の人々がいるという状況、すなわち、レストランなどが最も危険な区域となります。レストランも新型コロナウイルス対策を強化しているので、客同士が近接して座ることのないように配慮しています。また、店内に入るときに手指消毒を求められていることから、感染する機会はかなり減っていると考えてよろしいと思います。

観光地で屋外を歩く場合は、人通りがまばらであれば感染しないでしょう。しかし、混雑している場合は、屋外であっても社会的距離を保てないので、マスクを着用します。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)Klompas M et al:Airborne transmission of SARS-CoV-2:Theoretical considerations and available evidence.
JAMAPublished online July 13, 2020. doi:10.1001/jama.2020.12458

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」,「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

一覧へ戻る
関連書籍・雑誌
7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策

◆標準予防策と経路別予防策は身近な例えで理解すべし! 耐性菌対策は…井戸端会議を聞いて学ぶ?! オマケにファクトシート付き!! 
◆1日1読、楽しく読んで、7日間で標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策をすべてマスター可能。
◆新型コロナウイルス対策にも活用できる、感染対策の基礎から応用までのすべてが詰まった知識充実の一冊が登場。

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野邦夫 著
2020年7月刊

見える!わかる!! 病原体はココにいます。

◆病院内の各区域のどこに病原体が存在しているのか?
◆気を付けるべき場所と病原体を見える化したまったく新しい書籍!

浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科長 兼 衛生管理室長 矢野邦夫 著
2015年2月刊

介護スタッフのための 高齢者施設の感染対策

◆感染対策分野のエキスパートが介護スタッフのために,高齢者施設で行うべき感染対策を
 わかりやすく具体的に解説!
◆介護現場の第一線で実践的に使える,マニュアル作りにも役立つ一冊!!

東京医科大学微生物学分野 主任教授 松本哲哉 編著
2016年3月刊