北九州市は5月23日より第2波とされる流行にみまわれました。23日間報告がなかった後に、3人、3人、6人と新規の感染者が連日報告され、しかも全員がリンクの追えない患者でした。これには保健所も市役所もかなりの危機感をもち、市長が会見にて「第2波の入り口に立っている」と表現しました。緊急事態宣言が解除され、学校が再開される時期であり、全国的に注目を集めました。
報告日ベースで見ると4月末から23日間新規患者の報告はなく、緊急事態宣言後の自粛解除の影響も増加していないようにみえました。しかし、後に発症日ベースで振り返ってみると5月の連休明けから、徐々に患者は増加していました。診断までに時間がかかった症例が多く、報告日が23日以降になった症例が多かったわけです。
また北九州市の第1波ではかなり少ない患者数に抑えられていましたが、この時期はPCR検査の体制がまだ十分ではなく、なかなか検査を提出することができませんでした。お隣の福岡市ではかなり激しい第1波を経験しましたが、自粛解除後も再燃の徴候はなく、うまく封じ込めたように見えます。一方で北九州市は診断できなかった患者から感染が市中に広がり、一旦は自粛で抑え込まれたものの、自粛解除とともに顕在化してきたのではないかと考えています。PCR検査の体制が充実してきたために報告数が増えたのではないかという指摘もありましたが、PCRセンターは5月の頭から稼働しており、検査数も一定の数を保っていたため、これは考えにくいです。
現在流行は収束しつつあります。一時は果たして収束できるのかどうか心配でしたが、全国から注目を浴びたのは警鐘という意味ではよかったのかもしれません。検査体制や医療体制が充実しても流行自体に影響を与えることはできません。流行を抑え込めたのは再び警戒し、自粛していただいた市民の皆さんのおかげであると感謝しています。
(著者:健和会大手町病院感染症内科 部長 山口 征啓)