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2020.04.16 領域・分野別

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で需要が高まる人工心肺装置「ECMO」とは? 著者:菊地 利明

 

新型コロナウイルス感染症の重症患者では急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と呼ばれる低酸素血症を来します。ARDSの原因は、感染やそれに伴う過剰炎症反応による「びまん性肺胞傷害」です。ARDSという状態自体に有効な薬物療法はありません。しかしARDSの改善に有用な呼吸管理療法として、人工呼吸管理がガイドラインとして示されています(ARDS診療ガイドライン2016)。これまでARDS患者一般に推奨されてきた低容量換気による人工呼吸管理が、新型コロナウイルス感染症のARDS患者にも推奨されています。ただし「二酸化炭素排出に難渋する症例が多い」といった新型コロナウイルス感染症に特徴的な病態も報告されており、注意が必要です。なお日々新たな情報が更新されています。最新の情報は日本集中治療医学会のホームページ(https://www.jsicm.org/covid-19.html)などで確認してください。

一般のARDSと同様、新型コロナウイルス感染症のARDSにおいても、人工呼吸管理で換気が維持できない場合には、体外式膜型人工肺(ECMO「エクモ」)の適応が考慮されます。ECMOでは、肺のガス交換機能を代行するために、患者から脱血した静脈血を酸素化し、その二酸化炭素を除去した後に、患者に返血します。2020年3月30日時点で、新型コロナウイルス感染症の患者40名に対しECMOが用いられています。そのうち、19名は回復されていますが、6名が亡くなられています。残念ながらECMOを用いてもすべての新型コロナウイルス感染症患者を救命できるわけではありません。またECMOには、多くの医療資源と熟練した医療スタッフが必要ですので、限られた医療機関でしか行うことができません。新型コロナウイルス感染症の重症患者が急増した場合、「どのようにECMOを活用していったらよいのか」は大きな課題です。

著者プロフィール

菊地 利明(きくち としあき)

新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野 教授

日本呼吸器学会専門医・指導医、日本感染症学会専門医・指導医。日本結核・非結核性抗酸菌症学会の常務理事・「結核」編集委員長を務める。専門は、呼吸器感染症。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、抗菌薬パーフェクトガイド(ヴァンメディカル刊)がある。

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