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2020.03.27 領域・分野別

今さら聞けない! 標準予防策 ⑤患者ケアに使用した器材の処理 著者:矢野 邦夫

 

患者ケアには様々な器材が用いられています。それらすべてが使い捨てということはなく、再利用する器材も数多くあります。この時はスポルディングの分類を応用して対応します。

医療器材にはクリティカル器材、セミクリティカル器材、ノンクリティカル器材があります。クリティカル器材は患者の無菌組織に挿入される器材(血管内カテーテルやメスなど)です。セミクリティカル器材は粘膜組織に接触する器材(内視鏡や気管支鏡など)です。そして、ノンクリティカル器材は患者の健常皮膚に接触する器材(松葉づえなど)です。これをスポルディングの分類と言います。

これらの器材を使用した後には、適切な処置がなされてから再利用されることになります。クリティカル器材は滅菌が必要であり、セミクリティカル器材は高水準消毒、そして、ノンクリティカル器材は洗浄もしくは低水準消毒がなされます。この時大切なことは「使用された器材を処置する時、それが誰に使用されたかではなく、これからどのように使用されるかで決定される」ということです。例えば、B型肝炎の患者に用いた松葉づえだから消毒するというのは適切ではなく、松葉づえはノンクリティカル器材として使用するので洗浄でよいということになります。

「洗浄が徹底できない器材は消毒も滅菌もできない」ということを理解することも大切です。器材の表面に汚れや蛋白などが残っていると、消毒や滅菌の処理をしても、効果が不十分になるからです。汚れや蛋白などが、微生物を消毒や滅菌の処理から守ってしまうからです。そのため、構造が複雑であり、洗浄が難しい器材は再利用には向いていません。

医療器材の処置(滅菌・消毒・洗浄)をするスタッフは器材に付着している血液や体液に曝露する危険性があります。そのため、適切な個人防護具(手袋、ガウン、マスク、ゴーグルなど)を着用して処理します。

それでは食器類(皿、グラス、コップなど)はどのように処理するのでしょうか? 確かに、ノロウイルス感染症や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者が使用したスプーンや皿などの食器類にはそれらの病原体が付着している可能性はあります。そのため、食器の共有によって病原体が伝播するかもしれません。しかし、患者が使用した食器類は食器洗い機で処理をすればよいのです。食器洗い機に用いられる熱湯と洗剤の組み合わせは食器類の除染に十分なのです。接触予防策や飛沫予防策などの感染経路別予防策で管理されている患者が使用している食器類も同様の対応で構いません。

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

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自治医科大学附属病院 感染制御部長,准教授,病院長補佐,患者サポートセンター長(兼任),感染症科(兼任)科長,総合診療内科(兼任)副科長,栃木地域感染制御コンソーティアム TRIC’K 代表世話人 森澤雄司 編
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