新型コロナウイルス感染症の症状や転帰について、国立感染症研究所から報告されています(https://www.niid.go.jp/niid/ja/covid-19/9533-covid19-14-200323.html)。3月23日時点までに本邦で情報収集された確定症例(PCR検査陽性の症例)516例をまとめたものです。その対象の8割に当たる405例は日本国籍者で、日本人の新型コロナウイルス感染症の実態を示す、貴重なデータです。それによると、それぞれの症状を示した患者の割合は、発熱79%、咳76%、肺炎63%、全身倦怠感47%、咽頭痛29%、鼻汁・鼻閉25%、頭痛24%、下痢19%、関節・筋肉痛14%、嘔気・嘔吐6%、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)4%、結膜充血2%でした。肺炎は症状ではありませんが、症状として「息切れ」と読み換えますと、「発熱・咳・息切れ」の三徴が、新型コロナウイルス感染症の主要な症状と言えます。なお「発熱・咳・息切れ」の三徴が主要な症状であることは、米国疾病予防管理センター(CDC)のホームページでも示されています(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/symptoms-testing/symptoms.html)。
また最近主に欧州から、新型コロナウイルス感染症における嗅覚・味覚障害が相次いで報告されました。59例の入院患者を対象にしたイタリアからの報告では、嗅覚あるいは味覚の障害を訴えた患者は34%だったものの、ほとんどの患者(91%)が入院前から味覚の変化を自覚していました(Clin Infect Dis, 2020, ciaa330)。その機序として、新型コロナウイルスの受容体が口腔粘膜に広く発現していることが挙げられています。ただし、他のウイルス感染症でも嗅覚・味覚障害は出現します。嗅覚・味覚障害が、新型コロナウイルスに特異的な症状ではないことに注意は必要です。