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2020.04.07 領域・分野別

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染対策における手指消毒薬の正しい使い方 著者:矢野 邦夫

 

COVID-19感染対策では手指衛生が極めて重要であり、頻回な使用が可能なアルコール手指消毒薬が用いられています。しかし、最近はアルコール手指消毒薬が入手できなくなってきました。そのため、自施設でアルコール手指消毒薬を作成したり、代替となる消毒薬を用いるという努力がなされています。この場合、適切な消毒薬を適切な濃度で用いることが大切です。

消毒薬には生体消毒薬と環境消毒薬があります。前者は皮膚などに使用できる消毒薬であり、後者は環境表面(「手指の高頻度接触表面」など)の消毒や医療器具の滅菌・消毒に用いられる消毒薬です。手指消毒に用いる消毒薬は生体消毒薬でなければなりません。

アルコールは生体消毒および環境消毒に用いることができる優れた消毒薬です。実際、手指消毒のみならず、採血前の皮膚消毒、体温計の表面の消毒、アンプル・バイアルや輸液ルートの接合部の消毒などに用いられています。アルコールが最も効果的なのは50~80%の溶液です。アルコール手指消毒薬を作成する時には、この濃度を参考にします。ただし、アルコール単剤では手荒れを引き起こすので、必ず保湿剤を含有したものを作成します。

ポビドンヨードも生体消毒薬ですが、手指消毒に使用すると手荒れを引き起こします。COVID-19感染対策では頻回の手指消毒が求められるので、ポビドンヨード溶液は用いないようにします。

アルコール手指消毒薬の代替として利用できる製剤としては、低水準消毒薬であるクロルヘキシジングルコン酸塩、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムを含有したものがよいでしょう。濃度は0.1~0.2%の溶液が使用されています。

次亜塩素酸ナトリウム溶液は環境消毒薬であり、血液が付着した環境表面やノロウイルス患者の病室の消毒に用いられています。この消毒薬は生体消毒薬ではないので手指消毒には利用できません。

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

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