サル痘はサル痘ウイルスによる感染症であり、中央アフリカから西アフリカに常在しています。2022年5月以降、常在国からの輸入症例以外のヒト-ヒト感染症例が欧州を中心に複数報告されています。欧州での症例は男性間で性交渉をする者での感染事例が多いことが指摘されています。日本国内での報告はありません。日本では4類感染症に指定されています。
■臨床経過
潜伏期間は7〜14日です。潜伏期間のあとには前駆症状がみられるようになります。前駆症状には発熱、倦怠感、頭痛、咽頭痛、咳、リンパ節腫脹などがあります。リンパ節腫脹は、サル痘を天然痘から区別する際立った特徴です。前駆症状に続いて、皮疹がみられるようになります。皮疹は「斑紋期(1〜2日)⇒丘疹期(1〜2日)⇒小水疱期(1〜2日)⇒膿疱期(5〜7日)⇒痂疲期(7〜14日)」と進行していきます。手掌と足底にも皮疹がみられるので、水痘との鑑別に有用です。
重症度は、患者の健康状態、曝露経路、ウイルス株(西アフリカ vs 中央アフリカのウイルス)に影響されます。西アフリカのサル痘は軽症であり、ヒトからヒトへの感染が限定的です。一方、中央アフリカのサル痘は、西アフリカのウイルスによるサル痘に比べて重症であり、致死率は約10%です。
■感染経路
リスなどのげっ歯類との接触により、ヒトに感染します。ヒトからヒトに感染することがあり、この場合は接触感染および飛沫感染します。空気感染の報告はありません。その他の伝播経路には「体液で汚染された衣服またはリネンなどへの直接接触」および「水疱液への間接接触」があります。発疹の発症時期から感染性がありますが、すべての痂疲が落ちた頃には感染性はありません。
■院内感染対策
水痘や麻疹などの空気感染する感染症が鑑別診断に入ることから、サル痘を疑う患者には接触予防策および空気予防策を実施します。それらの予防策は、すべての痂疲が剥がれ落ちるまで実施します。天然痘ワクチンは約85%の発症予防効果があります。
(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫)
〔参考文献〕
(1)厚生労働省健康局結核感染症課:サル痘に関する情報提供及び協力依頼について
https://www.mhlw.go.jp/content/000945942.pdf
(2)CDC:Monkeypox.
https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/index.html