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2022.04.29 病原体

追加接種のワクチンは『変異株対応型』であるべし 著者:渡辺 彰

 

我が国では5月以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の4回目のワクチン接種が始まろうとしています。4回目接種の対象は、60歳以上の高年齢層と、基礎疾患を持ち医師が必要と認めた方々に限定されそうです。ただ、用いるワクチンはこれまでと同じファイザー社のコミナティ―(BNT162b2)およびモデルナ社のスパイクバックス(mRNA-1273)になります。インフルエンザワクチンでは、流行株の状況を予測し、用いるワクチン株(成分)を毎シーズン変えることで効果を得ていますが、同一成分の反復接種の効果はどうなのでしょうか?

また、新型コロナワクチンの追加接種の対象は今後、インフルエンザワクチンと同じ秋から初冬の時期にリスクの高い高齢者および基礎疾患保有者が中心になりそうですが、インフルエンザワクチンと同様、筆者は幼児~学童もその対象になる可能性があると考えています。加えて、用いるワクチンもインフルエンザワクチンと同じように、変異株の状況に合わせて変えていくべきと思っています。mRNAワクチンでは現在、ファイザー社とモデルナ社が変異株対応型のワクチンを開発中です。

モデルナ社では、変異株のベータ株に対応したmRNA-1273.211とオミクロン株に対応したmRNA-1273.214を、追加接種用の2価ワクチン(先祖株と変異株の双方に対応したmRNAを同量含む)として開発中ですが、前者のmRNA-1273.211を追加接種に用いた際の抗体価や忍容性に関する成績が、査読前論文のオンラインアーカイブであるResearch Squareの2022年4月15日号に掲載されました(1)。

mRNA-1273の2回接種から6か月以上経過後の米国の被験者を、mRNA-1273.211の50μgを接種した300例と100μgを接種した596例に分け、従来のmRNA-1273を追加接種した群と比較しています。なお、mRNA-1273.211はベータ株における9個の変異スパイク蛋白に対応していますが、うち4個はオミクロン株にも存在する変異です。オミクロン株に対する中和抗体価は、従来のmRNA-1273を追加接種した群でも十分に上昇しますが、mRNA-1273.211接種群ではさらに上昇し、追加接種1か月後でその2.20倍、6か月後も2.15倍高い値でした。また、mRNA-1273.211の50μg接種群の副反応の比率は100μg接種群より低く、mRNA-1273の50μg接種群と同程度とのことです。

早ければ次の冬以降に、このような変異株対応型の新型コロナワクチンが使えるようになると思われます。毎シーズンの流行株に対応しているインフルエンザワクチンと同様、新型コロナワクチンでも変異に的確・迅速・安全に対応したワクチンを使っていければ効果的であると思います。

(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)

〔文献〕
(1)Chalkias S et al:Safety, immunogenicity and antibody persistence of a bivalent beta-containing booster vaccine. Research Square. 15 Apr, 2022. DOI: https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-1555201/v1

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授
公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。

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