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2021.09.21 病原体

抗体療法薬「ソトロビマブ」の効果―変異株にも展望あり! 著者:渡辺 彰

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬としてソトロビマブが本年9月中にも我が国で承認される見込みです。COVID-19治療薬としては我が国で5番目、抗体療法薬ではロナプリーブ(1)に続く2番目の承認となる見込みですが、ロナプリーブと何が同じでどこが違うのでしょうか?

ソトロビマブは、グラクソ・スミスクライン株式会社とVir Biotechnology Inc.が開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するヒト型モノクローナル抗体です。SARS-CoV-2と重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV-1)が共通して持っているスパイク蛋白中のエピトープ(抗体が結合する特定の部位)に結合することでウイルスの侵入を防ぐと共に、感染細胞を除去する能力を高めることが示唆されていますが、同じヒト型モノクローナル抗体のロナプリーブとは異なるエピトープに結合します。臨床では点滴静注で投与されています。

本年6月には、重症化リスクの高い軽症から中等症のCOVID-19の外来患者を対象とするプラセボ対照のCOMET-ICE試験の結果が発表されました(2)。試験参加者1,057例において、投与29日目までの入院または死亡(死因は問わない)がプラセボ投与群の30例(6%)に対してソトロビマブ投与群では6例(1%)であり、79%減少するという有意の結果でした。安全性は1,037例で解析され、ソトロビマブ投与群の方に多かった有害事象はいずれも軽度から中等度の発疹(1%)と下痢(2%)でした。

COMET-ICE試験の583例までの結果を解析した中間成績を受け、米国食品医薬品局(FDA)は2021年5月26日、ソトロビマブの緊急使用許可を発出しました(3)。また、米国国立衛生研究所(NIH)も2021年6月8日、COVID-19治療ガイドラインに本薬の緊急使用許可に関する部分を追加記載し、軽症から中等症のCOVID-19外来患者に対するソトロビマブの投与を推奨しました(4)。なお、同ガイドラインでは、ソトロビマブの標的となる結合部位は、現在問題となっている変異株の主要な変異の結合部位とは異なる領域にあると述べており、変異の有無に関わらず本薬の活性が期待できるようです。

ソトロビマブではさらに、高リスクの入院していない軽症から中等症の成人および12歳以上の小児患者に対する早期投与の有効性を評価する第Ⅲ相臨床試験など、幾つかの臨床試験が行われ/計画されています。承認されて供給が潤沢になれば、未発症の濃厚接触者などが対象の予防投与が検討されてもよいと思いますが、まずは、承認される範囲内で広く有意義に使われることが期待されます。

(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)

〔文献〕
(1)渡辺 彰:抗体カクテル療法「ロナプリーブ」の効果― 予防投与にも展望あり! 感染対策Online 2021-08-20 https://www.kansentaisaku.jp/2021/08/3098/
(2)Glaxo Smith Kline K.K.:GSK Japan Announces Submission of Monoclonal Antibody Sotrovimab to the Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW) for Approval.Sept 6, 2021.
https://jp.gsk.com/media/1280252/20210906_sotrovimab_e.pdf
(3)U.S. Food & Drug Administration: Coronavirus (COVID-19) update: FDA authorizes additional monoclonal antibody for treatment of COVID-19. May 26, 2021
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-authorizes-additional-monoclonal-antibody-treatment-covid-19.
(4)National Institute of Health:The COVID-19 Treatment Guidelines Panel’s Statement on the Emergency Use Authorizations of Anti-SARS-CoV-2 Monoclonal Antibodies for the Treatment of COVID-19. July 8, 2021
https://files.covid19treatmentguidelines.nih.gov/guidelines/section/section_119.pdf

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授
公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。

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