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2021.08.11 病原体

1回目のコロナワクチンで少し強い副反応が出た! 2回目は接種できる? 著者:渡辺 彰

 

我が国でも新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、8月11日時点で、ファイザー社製とモデルナ社製が合わせて8,535万9,036回接種され(1)、2回目の接種を完了した人は3,668万2,653人を数えます。その際の副反応の詳細も報告されています(2)が、1回目の接種で副反応が出た場合、2回目の接種はどうすればよいのでしょうか?

接種後の反応に関する厚生労働省の報告(2)では、 副反応疑いがファイザー社製で0.03%(19,202例/7,413万7,348回接種、2021年2月17日~7月25日の159日間)、モデルナ社製でも0.03%(903例/358万9,581回接種、2021年5月22日~7月25日の65日間)見られ、アナフィラキシーは同じく360件(100万回接種あたり5件)と8件(同 2.2件)が見られました。ただ、「1回目の接種後に副反応やアナフィラキシーが出た場合、2回目接種をどうすればよいのか?」はこの成績からは読み取れません。そうした疑問に応える調査成績が米国から出ました。

Krantzら(3)は、米国内の5つの病院と大学で2021年1~3月に上記2つのワクチンの1回目接種後4時間以内にアナフィラキシーまたはアレルギー反応を示し、アレルギー/免疫専門医へ紹介された189例を対象とし、2回目接種後の反応がどうなったかを後方視的に調査しました。189例の平均年齢は43歳、女性が86%を占め、紅潮/紅斑が53例、めまい49例、接種部位痛46例、咽頭圧迫感41例、蕁麻疹39例、喘鳴/息切れ39例が主な症状であり、32例はアナフィラキシーの基準を満たしていました。

189例中159例(うち19例は1回目接種後にアナフィラキシーあり)が2回目の接種を受けており、47例は接種前に抗ヒスタミン薬が投与されていました。159例中32例(20%)が2回目接種後にアナフィラキシーやアレルギーを経験したものの、無処置もしくは抗ヒスタミン薬の投与によりいずれもが軽快していました。

彼らは、「1回目接種後にアナフィラキシーやアレルギーが出た人の多くが2回目接種後に症状が軽減していたのは、本当のアレルギーではなかったか、抗ヒスタミン薬の前投与で改善させることが可能な非IgE性依存性のアレルギーだったと考えられる」と述べています。コロナワクチン接種において、抗ヒスタミン薬はアナフィラキシーなどの症状を不明確にするので前投与は好ましくない(4)とされていますが、他の疾患の治療等で既に常用している例はその限りではない(5)ともされており、彼らの意見は大きな参考になります。

(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)

〔文 献〕
(1)政府COIポータル:新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む)).
https://cio.go.jp/c19vaccine_dashboard
(2)厚生労働省:新型コロナワクチンの副反応疑い報告について(資料 1-5-1、2021年8月4日付)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou-utagai-houkoku.html
(3)Krantz MS et al: Safety evaluation of the second dose of messenger RNA COVID-19 vaccines in patients with immediate reactions to the first dose. JAMA Intern Med. 2021 Jul 26. [Epub ahead of print]
(4)CDC:Interim Considerations: Preparing for the Potential Management of Anaphylaxis after COVID-19 Vaccination. (March 3, 2021)
https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/managing-anaphylaxis.html?CDC_AA_refVal=https%3A%2F%2Fwww.cdc.gov%2Fvaccines%2Fcovid-19%2Finfo-by-product%2Fpfizer%2Fanaphylaxis-management.html
(5)日本アレルギー学会:新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療(2021年3月1日付)
https://www.jsaweb.jp/modules/news_topics/index.php?content_id=546

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授
公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。

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