コロナワクチンの接種が2月から始まり、現在、高齢者への接種が進んでいます。最近は積極的に接種を受けたいという人が増え、どこの会場も予約が容易には取れない状態が続いています。イギリスやイスラエルのようにワクチン接種が進んでいる国ではコロナ患者数の減少が見られ、特効薬がない現状では、ワクチンがコロナ終息の切り札となっています。現在使用されているファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンは、副反応などのリスクよりも有効性のほうが大きく上まわっており、積極的に接種するべきワクチンと考えています。
mRNAワクチンの副反応では、注射部位に痛み、発赤、腫れが見られることがありますが、特に痛みが70~80%の人に見られます。接種部位の痛みはワクチン以外の原因は考えにくいので、ひどい場合は解熱鎮痛薬を内服してもよいです。
全身症状では、だるさ、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱、吐き気などが起こることがあります。全身症状については、他の病気によるものとの鑑別が必要になります。しかし、元気であった人に接種後に上記の全身症状が出た場合は、ワクチンによるものと考えてよいでしょう。全身症状が強くてつらいようであれば、解熱鎮痛薬を飲むように伝えています。ただし、発熱やだるさなどはコロナ発症との鑑別が困難で、現にワクチン接種直後にコロナを発症した症例もあります。コロナワクチンでは咳や息切れなど、コロナによく見られる呼吸器症状を引き起こさないので、鑑別はある程度可能です。
いずれにしても、ワクチン接種後のつらい症状に対しては解熱鎮痛薬の内服を許可しています。ただし、ワクチン接種前に予防的に解熱鎮痛薬を内服することは推奨されていません。
ワクチン接種後の痛みや発熱などの症状は、体が抗体を作っていることによる正常な反応なのですが、注射部位の発赤や腫れが24時間後に悪化したり、上記の副反応が2~3日で治まらないときは、医療機関に相談しましょう。また、コロナ特有の症状(咳や息切れ、味覚障害・嗅覚障害など)を認めた場合も、医療機関に相談しましょう。
(著者:国立病院機構東京病院 感染症科部長 永井 英明)