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2021.03.18 病原体

国内先行接種 新型コロナワクチン接種を受けた医師の速報 2回目 著者:永井 英明

 

2月17日より新型コロナワクチンの先行接種が全国の国立病院機構病院などの医療従事者を対象に始まりました。私は2月22日に1回目の接種を受け、3月15日に2回目の接種を受けました。1回目接種後は接種部位の痛みがあり、翌日がピークで2~3日で消失しました。2回目接種を受けた翌日は1回目と同様に接種部位の痛みがあり、軽度の倦怠感もありましたが、2日目の本日はだいぶ楽になりました。しかし、私個人の副反応についてどうこう言っても始まらず、多数の接種者についてのデータが重要です。

先行接種の人達には副反応の調査を行うことになっており、1回目接種の調査結果として、1回目接種後健康観察日誌集計の中間報告が発表されています(3月12日)(1)。

この調査(コホート調査)には19,808例が登録されました。そのうち、第1回接種後8日目以降に回収した17,138例(全体の86.5%)の健康観察日誌のまとめについて報告しています。接種部位の疼痛を92.4%に認め、ほとんどが翌日に痛みを自覚し、接種3日後には軽快しています。倦怠感を23.1%に認め、やはり翌日がピークです。頭痛は21.3%に認められました。接種30分以内に失神を伴わない血管迷走神経反射や動悸、紅斑、痛みなど88例(0.44%)に認めましたが、アナフィラキシーは発現しませんでした。

以上のように、海外からの報告例とそれほど違わない副反応の頻度かと思います。ただ、東京病院で2回目接種が始まりましたが、発熱などの全身反応が多い印象があります(印象でものを言ってはいけませんね)。

この先行接種ではアナフィラキシーはありませんでしたが、全国からの報告では約18万例中37例がアナフィラキシーとして現場から報告されました。しかし、そのうち17例を専門家が検討した結果、10例はアナフィラキシーとされませんでした。正確に言うと、我が国の仕組みではワクチン接種後に起こった好ましくないことは「副反応疑い」例として報告されるのであり、副反応確定例ではありません。報告を受けた後に、実際に副反応であるかを検討することになっています。本来であれば「副反応疑い」という文言は適切でなく、「有害事象」とするべきです。そうでないと「副反応疑い」が「副反応」として扱われ、確定していない間に独り歩きしてしまいます。現に、「アナフィラキシーの37例はきわめて多い、欧米に比べて何十倍だ」という報道がありました。このように報道されてしまうと、一般の人はワクチンは恐ろしいと思ってしまいます。メディア関係の皆さんはこの辺りを正確に伝えていただきたいと思います。また、副反応疑い例の報告があった場合は、迅速に因果関係を判断して公表して欲しいものです。

(著者:国立病院機構東京病院 感染症科部長 永井 英明)

〔文献〕
(1)新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査) 1回目接種後健康観察日誌集計の中間報告
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000752514.pdf

著者プロフィール

永井 英明(ながい ひであき)

国立病院機構東京病院 感染症科部長

日本結核・非結核性抗酸菌症学会(理事・指導医)、日本呼吸器学会(専門医・指導医)、日本感染症学会(専門医・指導医・ICD)、日本エイズ学会(認定医・指導医)などに所属。専門は呼吸器一般、抗酸菌症、感染症、緩和ケア。多摩府中保健所感染症協議会委員長、東京都医師会感染症予防検討委員会委員、東京iCDC専門家ボード委員などを兼任している。

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編集:
東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授 渡辺 彰
帝京大学医学部微生物学講座 主任教授 斧 康雄
国立病院機構東京病院感染症科部長 永井 英明


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