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2021.01.20 病原体

若者も危ない! 新型コロナの後遺症―“Long COVID” 著者:永井 英明

 

新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の後遺症において、長引く症状は“Long COVID”と呼ばれ世界的に問題になっており、報告が相次いでいます。

最新の中国・武漢からの報告(2021年1月)では、新型コロナ患者1,733人の症状出現後6ヵ月時点で76%の人に何らかの後遺症を認めています。多い順に並べると、疲労感や筋力低下(63%)、睡眠障害(26%)、不安感やうつ状態(23%)、脱毛(22%)、嗅覚障害(11%)、動悸(9%)、関節痛(9%)、食欲低下(8%)、味覚障害(7%)などです。女性と急性期に呼吸状態が悪かった人ほど、肺機能検査の異常、疲労感や筋力低下、不安感やうつ状態を認めました。

中国からの別の報告では、新型コロナ患者の3ヵ月後に見られた後遺症について年齢別に見ています。この論文では①20~40歳、②41~60歳、③61~80歳の3つの年齢別の後遺症出現率が示されており、身体機能の低下や疲労感は①13.7%、②28.8%、③37.4%、動いた後の多呼吸は①15.4%、②21.6%、③25.1%、頻脈は①10.3%、②10.4%、③14.8%、脱毛は①17.9%、②32.8%、③29.8%でした。頻脈以外の上記の3症状は女性に起こりやすく、特に脱毛は男性患者の4.9%に対して女性患者の48.5%に認められました。高齢になるほど後遺症は起こりやすいですが、20~40歳も決して低率ではありません。

WHO(世界保健機関)も後遺症に注目し、若年層向けの効果的な公衆衛生メッセージが必要であるとしています。

“Long COVID”については明確な原因、予防法、治療法などは解っていません。確実な予防は新型コロナに感染しないことです。最近は20歳代、30歳代の若い感染者が増加しており、若い人の行動が問題になっています。若い人は、新型コロナでは重症化しないと軽く考えないで、若い人でも後遺症で苦しんでいる人がいることを知って欲しいものです。新型コロナを甘く見てはいけません。すべての人が移らない、移さない行動をとるべきです。

(著者:国立病院機構東京病院 感染症科部長 永井 英明)

著者プロフィール

永井 英明(ながい ひであき)

国立病院機構東京病院 感染症科部長

日本結核・非結核性抗酸菌症学会(理事・指導医)、日本呼吸器学会(専門医・指導医)、日本感染症学会(専門医・指導医・ICD)、日本エイズ学会(認定医・指導医)などに所属。専門は呼吸器一般、抗酸菌症、感染症、緩和ケア。多摩府中保健所感染症協議会委員長、東京都医師会感染症予防検討委員会委員、東京iCDC専門家ボード委員などを兼任している。

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