いよいよ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの接種スケジュールが具体的になりつつあります。第3波のピークは高く、重症例、死亡例も多く、このように何度も波を繰り返していては、経済も医療も疲弊してしまいます。今まで「Withコロナ」という考え方でやってきましたが、「Withoutコロナ」が必要です。私の外来患者は呼吸状態の悪い高齢者が多いのですが、この1年間閉じこもり生活をしている人が多く、「怖くてどこにも行きたくない」と言います。「Withコロナ」という発想は、健康弱者のことを考えていない言葉だと思います。COVID-19を押さえ込むには、治療薬のない現状ではワクチンしかありません。個人の行動変容を促すことができていないからです。ワクチンに対する期待は大きいものがあります。
国の『予防接種に関する基本的な計画』には“わが国の予防接種施策の基本的な理念は「予防接種・ワクチンで防げる疾病は予防すること」”とされており、この考え方は世界の共通認識です。そこで、COVID-19に対して世界中でワクチン開発が急がれたわけです。
COVID-19ワクチンがどれくらい有効か見てみましょう。先行している3社のワクチンの有効率は、ファイザー社95%、モデルナ社94.5%、アストラゼネカ社70.4%(2つの試験を合わせた結果)と、いずれもきわめて高率です。インフルエンザワクチンの有効率が50~60%と言われているのと比較しても、高率であることが解ります。この有効率について誤解している人もいますので説明しますが、95%の有効率というのは接種を受けた人の95%が発病しない、という意味ではありません。接種を受けなくて発病した人の数に比べ、接種を受けて発病した人の数が95%減った、と言うことです。ファイザー社のワクチンの臨床試験では、接種を受けた人約2万人、受けなかった人約2万人の中で、発病者は前者で8人、後者で162人でした。つまり、接種すると発病者が95%少ないので95%の有効率と言うことになります。
ワクチンに対する期待はますます高まっていますが、ワクチンを接種すれば二度とかからないわけではありません。100%の有効率ではないからです。上記のように何%かの発病者はいます。また、このワクチンの効果がいつまで続くかはわかっていません。したがって、ワクチン接種を受ければ発病するリスクは低くなりますが、ゼロではないのでCOVID-19の蔓延が続く間は、今までの感染対策(マスクの着用、手指衛生、3密回避、ソーシャルディスタンスの維持)は続けなければなりません。
(著者:国立病院機構東京病院 感染症科部長 永井 英明)
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