副反応の無いワクチンはありません。しかしながら、ワクチンの副反応を心配するあまり、ワクチンを打たないと宣言している人もいます。日本では新しいワクチンというと、真っ先に副反応を取り上げる風潮があります。でも、ちょっと待ってください。なぜワクチンを接種するのでしょうか? それが解っていないと、判断を誤ります。
ワクチンの目的は、感染を予防する、発症を予防する、感染が原因による基礎疾患の重症化や後遺症の発生を防ぐ、死亡を防ぐ、たくさんの人が予防接種を受けることで集団免疫ができ新たな感染者を減らすことです。当たり前と言うかもしれませんが、この当たり前のことより先に副反応の話が出るのが、日本です。
ワクチンを考える際には、感染症を予防する効果(ベネフィット)と副反応を起こす負の部分(リスク)のバランスを見ることが重要です。ベネフィットを考えるときは、その感染症が個人や社会に及ぼす影響の大きさも考える必要があります。風邪の予防のためのワクチンはそれほど必要とされないでしょう。重症化する人が少ないからです。ところが、エボラ出血熱のような死亡率が高く、治療薬がない感染症だとワクチンに対する期待は大きくなります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は高齢者を中心に死亡率が高く、社会に及ぼす影響が大きいので、予防効果の高いワクチンが求められます。しかし、ワクチンの有効率がどんなに高くても、リスクである副反応が高率に起こり、重症例もみられるのであれば、使用しにくいでしょう。
ワクチンのベネフィットとリスクを天秤にかけて、ベネフィットが大きく、リスクは受け入れることができる範囲と判断されたワクチンが、承認されて世の中に出てきます。COVID-19ワクチンもそのように判断されたものが使われています。
予防接種では、医師と接種を受ける人との間の双方向コミュニケーションが大事です。医師はベネフィットとリスクを十分説明し、接種を受ける人の質問、疑問に的確に答える必要があります。副反応の対処の仕方についても、お互いに理解していなければなりません。
COVID-19ワクチンの接種が順調に進み、COVID-19が確実に終息することを期待しています。
(著者:国立病院機構東京病院 感染症科部長 永井 英明)
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