2021年1月下旬で7,000万回超まで接種が進んだ世界各国からは遅れましたが、日本でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まります。副反応が心配だという人もいますが、実際はどうでしょうか?
ファイザーとモデルナのワクチンはどちらもmRNAワクチン、アストラゼネカのものはウイルスベクターワクチンですが、いずれもウイルスの遺伝情報の一部を接種して体内でウイルスの一部を作り、これに対して免疫ができるものです。それぞれの臨床試験で、未接種者に比べて接種者のCOVID-19の発症を70~95%抑えるという高い効果を示し、この数値(ワクチン効果)はインフルエンザワクチンより高い数値です。
一方で、一般への接種が始まってからアナフィラキシーショックが報告されています。米国疾病管理予防センター(CDC)の報告ではファイザー製が189万人中21人、モデルナ製は404万人中10人の発生ですから、インフルエンザワクチンの100万人中1人強の数倍~十倍前後です。ただ、多くは他のワクチン等で同様の反応があった例であり、そうした方は今回のワクチン接種を避けるよう推奨されました。なお、インフルエンザワクチンの場合と同様、ほとんどが接種後15分までに起き、アドレナリンや抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などの投与で治すべく態勢がとられていますから安心です。
アナフィラキシー以外にも、接種部位の腫れや発赤、痛みなどの局所反応、頭痛や倦怠感、寒気、関節・筋肉痛などの全身反応というインフルエンザワクチンと同じ種類の副反応が見られます。重篤なものは見られない一方、その発生率は軽微なものまで入れると数十%と、インフルエンザワクチン(局所反応が10~20%、全身反応が5~10%)より数倍高い数字です。中には、2回目接種の翌日に仕事ができない程の倦怠感があったという例もあるようですが、後遺症になった報告はなく、COVID-19の発症・軽快後に見られることのある種々の後遺症(半年後にはほとんどなくなるようです)に比べれば軽いといえます。
このように副反応がやや多いのは、新しい病原体の構成成分に対してヒトの体の免疫がより強く反応しているためであり、ワクチンの効果は高いと見ることができます。「良薬は口に苦し」です。COVID-19はインフルエンザより致死率が高く、ワクチンのメリットはデメリットよりはるかに高いですから、接種は前向きに考えましょう。
(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)