新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの接種開始が間近ですが、副反応(ワクチンでは副作用とは言わない)を心配する人も多いと思います。ワクチンは健康な人に接種されるので、当然、安全性が気になります。ワクチンは有効であると同時に、安全でなければなりません。先行している3社のCOVID-19ワクチンは、mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチンという新しいタイプのワクチンであることも、心配する理由にあがっています。
しかし、心配のあまりワクチン接種後に起こった不都合な出来事をすべて副反応と言ってしまうのは間違っています。ワクチン接種後に起こった不都合な出来事は有害事象として幅広く拾い上げて、その中でワクチンに関連があると考えられるものを副反応とする仕組みになっています。ところが、有害事象が副反応として報道されることがあり、これは誤りです。
高齢者にワクチンを接種した直後に、ある疾患、例えば脳卒中を起こしたとします。それは有害事象としてあがってきますが、副反応とはただちに決定できません。同年代のワクチンを接種してない人々に脳卒中が起きる頻度と、ワクチンを接種した人々に脳卒中が起きる頻度を比べて、統計学的に差が無ければワクチンとの関係はないと考えられます。たまたまワクチン接種後に起こったということになり、これを「紛れ込み」と言います。有害事象は「紛れ込み」でないかを検討しなければなりません。
臨床試験で認められた有害事象は、ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンでは、接種部位の疼痛の頻度が70~80%台と高く、全身反応では倦怠感、頭痛、寒気、嘔気・嘔吐、筋肉痛などの頻度が高くなっています。発熱(38℃以上)は1回目では少ないですが、2回目の接種後では10~17%にみられています。ファイザー社のワクチンでは、アナフィラキシーが目立つと言うことでしたが、ほとんどが過去にアナフィラキシーを起こした人々でしたので、そのような人は接種を控えた方がよいでしょう。アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンでは、若年者群で疼痛の頻度が高くなっています。接種後の発熱は、18~55歳群の1回目で24.5%であった以外はみられませんでした。
いずれにしても、副反応の無いワクチンはありません。副反応については詳しい説明が求められますし、万一副反応が起こった場合の対応についても説明が必要です。また、有害事象が起こったときは、速やかにワクチンとの因果関係について検討して、公表する必要があります。
(著者:国立病院機構東京病院 感染症科部長 永井 英明)
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