2月17日より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの接種が始まりました。
先行接種として全国の国立病院機構病院などの医療従事者約40,000人を対象に接種し、20,000人については有害事象の記録をとっています。このデータは逐次発表されるとのことです。当院でも事前に準備し、2月17日より接種を開始しました。多数のメディアが取材に訪れ、関心の高さが伺えました。その後も特に混乱もなく接種が順調に進んでいます。
ワクチンはファイザー社のコミナティ筋注です。-75℃前後の保存が必要で、2~8℃の冷蔵にすると2時間程度で解凍されました。解凍されたものは5日間の保存が可能ですが、その日に使用するワクチンを接種直前に解凍し準備しました。1バイアル中に0.45mLのワクチンがあり、これに生理食塩水1.8 mLを加えます。希釈したワクチンは6時間以内に使用することになっています。希釈後は2.25 mLですので6等分すると1本当たり0.375 mLとなり、これをローデットシリンジ(死腔の非常に少ないシリンジ)で吸引すると1回接種量0.3 mL、6本は楽に取れました。バイアルには5回分と書いてありますが、6回分使えますので注意が必要です。1バイアル当たり5回分か6回分かで情報が錯綜していましたが、この1回分の差は大きいです。1箱195バイアル入っていますので、1回分が減ると195回分(2回接種として97人分)が無くなるわけです。シリンジの確保が重要です。
筋注については慣れていないスタッフが多いと思いますので、事前に筋注法の確認が必要です。
私は、昨日(2月22日)接種を受けました。接種部位は痛いですが、今のところ他の症状はありません。コミナティ筋注の添付文書では、日本人のデータとして1回目接種後の副反応として、接種部位の痛み86.6%、疲労40.3%、頭痛32.8%、筋肉痛14.3%、悪寒25.2%、関節痛14.3%、発熱(37.5℃以上)14.3%があげられています。痛みはほぼ必発ですが、いずれの症状もワクチンの副反応としては当然起こりうると考えています。重篤な副反応については目を光らせていなければなりませんが、他のワクチンでも起こりうる上記のような副反応については受け入れていただきたいものです。
今後、いろんな有害事象が報告される可能性がありますが、メディアにはワクチンとの因果関係が明確な副反応とワクチン接種後に集めなければならないあらゆる有害事象とを、一緒くたに報道しないで欲しいと思っています。
(著者:国立病院機構東京病院 感染症科部長 永井 英明)