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2020.09.10 病原体

Go To トラベルと沖縄の新型コロナ―患者状況とその対策、医療現場から 著者:藤田 次郎

 

新型コロナウイルスは高温・多湿に弱いという自称専門家の発言は大間違いでした。今年の私は新型コロナウイルス感染症に振り回され、夏休みは取れませんでした。

まず伏線となったのが米軍兵士の感染多発でした。米軍兵士が感染した場合、濃厚接触者が追いにくく、このため沖縄県民を守るために、基地周辺で多くの住民を対象にPCRを実施しました。このことが検査体制に過剰な負担を与えました。Go Toトラベル以前に、東京の歌舞伎町のホストクラブ、およびキャバクラでクラスター(感染者集団)が発生し、多くの店が営業自粛となりました。休業した店がホストやキャバ嬢を確保する目的で慰安旅行を企画しました。本来ならグアム、またはハワイを選択するのでしょうが、患者数が少なかった沖縄が選択され、歌舞伎町から145名のホストと80名のキャバ嬢が団体で訪れ、沖縄の繁華街で楽しんだようです。そこにGo Toトラベルを活用した名古屋のホストと多くの観光客が加わりました。

その後の患者数の増加は我々の予想を大きく超えるものでした。当初、私が座長を務める専門家会議では、確定診断症例は、全例医療機関に入院するという方針を立てていましたが、この方針はあっけなく崩れました。沖縄県の繁華街を中心に急激に陽性患者が増えたため、入院調整すら追い付かず、またGo Toトラベルに期待し観光客を心待ちにしていたホテルを宿泊施設として確保することは困難であり、結果的に自宅待機者が急増しました。那覇市の繁華街で働く女性には、シングルマザーも多く、その子供は祖父母が見守らざるを得ない状況も生じ、短期間に高齢者に感染が拡大しました。その後、老健施設、病院などでもクラスターが発生し、指定医療機関のみならず、重点医療機関への荷重も極めて大きなものでした。

Go Toトラベルだけの影響とは思いませんが、新型コロナウイルス感染症は真夏の沖縄県に5週間の緊急事態宣言の発令を余儀なくしました。

(著者:琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授 藤田 次郎)

著者プロフィール

藤田 次郎(ふじた じろう)

琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授

日本呼吸器学会理事、日本感染症学会監事、日本結核病学会理事、昭和56年岡山大学医学部卒業。虎の門病院レジデント、国立がんセンター病院レジデント、および2年間の米国ネブラスカ医科大学留学を経て昭和62年より香川大学医学部に勤務。平成17年5月から琉球大学大学院 感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授。平成27年4月からの4年間は琉球大学医学部附属病院長。感染症、呼吸器関連の著書は30冊を超える。

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