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2020.08.31 病原体

航空便搭乗 隣の人が咳をしている!―夏とレジャーとコロナ対策 著者:矢野 邦夫

 

航空会社は飛行機内での新型コロナウイルスの伝播を防ぐために、搭乗前に体温や体調を聞いています。そのため、ある程度スクリーニングされていますので、感染者が搭乗することは少なくなっています。しかし、無症状や軽症の患者がそのようなスクリーニングを潜り抜けて搭乗する可能性は否定できません。

隣や近くの乗客が、実は呼吸器症状あるような気がする場合、とても心配になります。しかも、席の移動や立って場所を変えることができません。もちろん、呼吸器症状のある人のすべてが新型コロナウイルス感染症に罹患しているとは限りません。飲用水を飲んだときにむせたのかもしれません。機内は乾燥するので、それによって咳が出るのかもしれません。

このような場合、その人がマスクを着用していることを確認し、そして、自分もマスクを着用します。これでウイルスの伝播を防ぐことができます。米国であった事例ですが、新型コロナウイルスに感染していたヘアースタイリスト2人が139人の客を担当しました。もちろん、1m以内でヘアーを取り扱ったのです。しかし、客は誰も感染しませんでした(1)。濃厚接触だったにもかかわらず、感染しなかったのです。実は、すべての客とスタイリストはマスクを着用していたのです。2人の人間がマスクを同時に着用していると、このウイルスは伝播できないようなのです。そのため、隣や近くの乗客が、実は呼吸器症状があるような気がした場合には、マスクを着用しましょう。そして、その乗客がマスクを着用していなければ、客室乗務員に依頼して、マスクの着用を促してもらいましょう。

このように飛沫を吸い込まない努力をしていても、その人の顔面とマスクの隙間から飛び出した微小粒子が空気中に浮いて、それを吸い込んで感染するのではないか、と心配する人もいるかもしれません。そのような心配は必要ありません。このウイルスは空気感染しないからです。飛沫予防と手指消毒を徹底すれば感染対策としては十分です。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)Hendrix MJ et al:Absence of apparent transmission of SARS-CoV-2 from two stylists after exposure at a hair salon with a universal face covering policy — Springfield, Missouri, May 2020.
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/pdfs/mm6928e2-H.pdf

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」,「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

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