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2020.08.07 病原体

新幹線・特急列車 長時間乗車でコロナうつる?―夏とレジャーとコロナ対策 著者:矢野 邦夫

 

新幹線や特急列車に乗車すると、次の駅に到達するまでの数十分間、下車できません。もし、同じ車両に新型コロナウイルス感染症の患者が乗車していれば、感染してしまうかもしれません。長時間の乗車ではどのような感染のリスクがあるのでしょうか?

それは「飛沫を浴びる可能性が高くなる」「ウイルスで汚染した環境表面に触れる可能性が高くなる」ということです。決して、空気中に浮遊しているウイルスを吸い込む時間が長くなるということはありません。新幹線や特急列車の換気は十分であり、吸い込むことによって感染できるほどの数のウイルスは空気中に浮いていません。

ときどき、新型コロナウイルスは空気感染するのではないかと心配する人がいますが、そのような心配は止めましょう。感染者が咳をしたり、叫んだりしたときに、口からエアロゾルが空気中に放出されます。その中にウイルスが含まれている可能性はあります。しかし、空気中に浮遊することはウイルスにとって過酷な環境です。紫外線が飛んでいるし、乾燥しています。病原体は乾燥に弱いのです。空気中に浮遊しているときにも、ウイルスは生き延びなければなりません。そのような条件では、ウイルスは次々死滅してゆきます。人間が宇宙空間や海底1万mでは生息できないように、過酷な環境ではウイルスも生きることはできないのです。それでも、一部のウイルスは生き残って浮遊しているかもしれません。それを周囲にいる人が吸い込む可能性はあります。しかし、吸い込んだからといって、必ず感染することはありません。眼、鼻、口の粘膜に付着するのですが、そこには粘液があります。粘液に付着して、そのまま流されてしまいます。それでも、一部のウイルスは粘液を貫通して、組織に到達するかもしれません。しかし、そこには免疫細胞が待っているのです。

一方、咳やくしゃみをしたときに口や鼻から飛び出す「飛沫」は大量のウイルスを含んでいます。それが眼、鼻、口の粘膜に付着すれば、そのなかの相当数のウイルスは体内に侵入できてしまいます。ドアノブなどにも飛沫や鼻水に含まれていたウイルスが付着しているかもしれません。それに触れた手指が自分の眼、鼻、口の粘膜に触れれば感染するのです。すなわち、「飛沫」や「飛沫が付着している環境表面」に曝露する機会が多くなるというのが、長時間乗車のリスクであると言えます。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」,「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

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