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2020.07.28 病原体

大阪における新型コロナウイルス感染症 これまでの動向 著者:掛屋 弘

 

大阪における新型コロナウイルス感染症患者数は、2020年7月26日までに3,188名と東京に次ぐ感染者数を数えています。大阪では、本年2月に大阪市内のライブハウスによるクラスター形成が注目を受け、3密(密閉、密集、密接)のリスクを全国に知らしめるきっかけとなりました。その後、高齢者施設やリハビリ施設でクラスター形成が起こり、私は大阪市保健所スタッフや厚生労働省クラスター班とともに施設を訪問させていただきましたが、小規模施設では当時、個人防護具が十分に行き届かず、専門家がいない施設での感染対策の課題が浮き彫りになりました。また、クラスター発生施設からの転院を契機にクラスター形成となった大規模施設では、感染対策が充実していても潜伏期間が長い本感染症のコントロールの難しさが実感されました。

当院は大学病院として人工呼吸器を要する複数の重症患者の受け入れを行いましたが、スタッフは初めて経験する感染症に対してシミュレーションを繰り返し、完璧な感染対策で診療にあたってくれました。また、感染症内科・感染制御部は大阪市保健所の依頼で濃厚接触者からの検体採取とPCR検査を担当し、院内で本年6月末までに約1,200件のPCR検査を実施して大阪府下の感染対策に貢献しました。細心の注意で検査に尽力してくれた微生物検査室スタッフに感謝しています。今後は、当院で研修医〜大学院を過ごされた山中伸弥先生の京都大学iPS細胞研究所および大阪府、本学との共同研究でさらに地域に役立つPCR検査を充実させる予定です。

大阪市では我が国で初めてのコロナ専門病院に大阪市立十三市民病院が指定され、その後に民間の阪和第二病院も加わりました。私達は2つの病院の専門病棟の立ち上げに携わらせていただきましたが、7月に入り大阪府下の患者急増とともに両病院への患者受け入れが進んでいます。

大阪府では吉村洋文知事が強いリーダーシップを発揮して、大阪府独自の基準に基づく自粛要請・解除および対策の基本的な考え方を示した「大阪モデル」を提唱しています。モニタリング指標の状況を日々「見える化」することを目指したものですが、7月には修正「大阪モデル」が制定されました。修正案は医療崩壊回避を目的にしながら、社会経済活動を動かしていくためのバージョンアップでありましたが、当初は基準値の変更を憂慮する意見が多く寄せられました。一方、修正「大阪モデル」は7月中旬からの第2波到来をいち早く察知して、全国に先駆けて府民に対する警戒基準である「黄色信号」を発信しています。私の教室の窓からみえる大阪のシンボル通天閣は現在、黄色にライトアップされていますが、この色は通天閣には不似合いです。一日も早く、通天閣がいつもの輝きを放ち、笑いと食い倒れの街・大阪に戻ることを願っています。

(著者:大阪市立大学大学院医学研究科臨床感染制御学・感染症内科 教授 掛屋 弘)

著者プロフィール

掛屋 弘(かけや ひろし)

大阪市立大学大学院医学研究科臨床感染制御学・感染症内科 教授

1992年(平成4年)長崎大学医学部卒業、第2内科に入局。河野 茂先生(現、長崎大学学長)のご指導の元、呼吸器感染症、特に真菌の研究に従事。大学院卒業後、米国国立衛生研究所(NIH)に留学。帰国後は、関連病院で呼吸器内科医として臨床経験を重ね、2007年6月より長崎大学病院・助教、その後、講師、准教授を経て、2013年4月より大阪市立大学大学院 臨床感染制御学講座 准教授として赴任。2014年10月より教授に就任し、現在に至る。

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