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2020.06.15 領域・分野別

ベトナムにおける感染対策活動―JICAチョーライ病院赴任経験から 著者:黒須 一見

 

ベトナムは日本から飛行機で約6時間の東南アジアに位置し、全長331,212平方キロメートル、人口約9,600万人、首都はハノイ市の社会主義共和国です。南北に長いため気候も北部は四季があるのに対し、南部は乾季と雨季という特徴があります。ベトナムの医療は「リファラル」という制度で、コミューン(主にクリニック、1次レベル)、中規模病院(2次レベル)、大病院(3次レベル)の順で医療を受けることになっています。下位レベルから上位レベルに紹介されると医療保険が使用できる仕組みです。

私は2017年4月よりホーチミン市の国立チョーライ病院に国際協力機構(JICA)技術プロジェクト専門家として2年7ヶ月赴任しました。チョーライ病院は、ベトナム戦争の最中に日本の政府開発援助(ODA)で建設されたという歴史があり、長年に渡り日本が支援を行ってきました。ベトナムのなかでもトップクラス(トップリファラル)の病院で、定床1,900床のところ、実際の入院患者は約2,500人、外来患者5,000人/日、手術件数100件/日という巨大病院です。ベトナム南部25省が対象であり、早朝から患者と家族が来院するため、院内は常に混雑しています。薬剤耐性菌感染症も多く、医療関連感染対策が喫緊の課題となっています。約3年間の活動では、①人材育成、②感染管理プラクティスの向上(例、手指衛生遵守率の向上、人工呼吸器関連肺炎の感染率減少、手術部位感染率の減少)、③抗菌薬の適正使用、④薬剤耐性遺伝子検査の実施について取り組みました。文化や風習の違いなどもあり、最初の1年間は苦労しましたが、辛抱強くアプローチすることで最終的に目標値を達成することができました。ベトナム人にとって日本は憧れの国の1つであり、日本での感染対策が常に注目されており、私がこれまで日本で実践してきた対策を受け入れやすかったこと、勤勉だけど飽きやすいというベトナム人の特徴を理解し、アプローチをしたことなどが成功要因だったと思います。プロジェクトは一時休止状態となりましたが、SNS等を通じて、院内巡視の状況を確認し、相談にのるなど繋がりを持つことで継続的に活動の支援をしています。

(著者:国立国際医療研究センター国際医療協力局 客員研究員 黒須 一見)

著者プロフィール

黒須 一見(くろす ひとみ)

国立国際医療研究センター国際医療協力局 客員研究員

看護師、感染制御学博士、医療保健学修士、感染管理認定看護師。都立病院にて12年間感染管理担当者として従事後、2017年4月よりJICA技術プロジェクト専門家として、ベトナム国ホーチミン市の国立チョーライ病院で約3年間、感染管理と看護管理の技術指導を実施。現在は、国立感染症研究所薬剤耐性研究センター研究員。2020年4月より厚生労働省クラスター対策班として、新型コロナウイルス感染症が流行している現場で疫学調査と感染管理指導を実践中。

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