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2020.06.29 病原体

新型コロナウイルス第2波・第3波にそなえた感染対策(衣類と食器)―うっかりやりがちな感染対策の間違い 著者:矢野 邦夫

 

新型コロナウイルス感染症の流行期に、家族が発熱したり、咳をしたりすると、「もしかして、新型コロナウイルスに感染しているのではないか?」などと心配になってしまいます。そのため、家庭内でも別室で生活したり、マスクをすることになります。しかし、寝具類、タオル、衣類などはどうしたらよいのでしょうか?

新聞などで「新型コロナウイルス感染症の患者が使用したリネン類や医療従事者の白衣を洗ってくれる業者がみつからない」などの報道がありました。こういった報道を見てしまうと、とても心配になってきます。そうかといって、発熱や咳をしている家族が使用した衣類やタオルなどをすべて廃棄するわけにはいきません。

ここで病院での院内感染対策の原則をご紹介したいと思います。それは「洗濯後の寝具類、タオル、衣類などは感染源とはならない」というものです(1)。この原則は新型コロナウイルスのみならず、多剤耐性菌、結核菌、病原性大腸菌O157など、すべての病原体に用いることができます。もちろん、洗濯前のものであれば、病原体が付着している可能性があるので、触れないようにしなければなりません。それらが周囲の環境表面に触れないようにすることも大切です。それでは、具体的にはどうしたらよいのでしょうか?

使用した衣類やタオルなどは直接、洗濯機に入れて洗ってしまえばよいのです。他の家族の衣類と一緒に洗濯しても構いません。もしくは、使い捨てのプラスティック袋に家族の衣類と一緒に保存しておいて、時間がある時に洗うのです。もちろん、プラスティック袋は廃棄します。洗濯機で洗うと、大量の水道水が使用され、それによって病原体が流れ落ちてしまうからです。もし、昔々のように洗濯桶と洗濯板でゴシゴシと手洗いをしているならば、大量の水が使用されていないので、感染者が使用した衣類などは洗濯できません。

それでは、食器類についてはどうでしょうか? 使い捨ての食器が必要でしょうか? これにも、院内感染対策の原則が応用できます(1)。それは「感染者が用いた食器類(皿、グラス、コップなど)であっても、食器洗浄機を用いるならば、他の食器と一緒に洗ってよい」というものです。病院には様々な病原体に感染している人が多数入院しています。その中にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のような耐性菌やノロウイルスなどに感染した人も含まれます。そのような人が使用した食器は食器洗浄機で洗って再利用されているのです。もし、自宅で食器を手洗いするならば、水が飛び跳ねないように、洗浄剤を用いて静かに洗う必要があります。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)CDC:2007 Guideline for isolation precautions: Preventing transmission of infectious agents in healthcare settings.
https://www.cdc.gov/infectioncontrol/pdf/guidelines/isolation-guidelines-H.pdf

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

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