ロタウイルス胃腸炎の予防のために、令和2年8月1日以後に生まれた対象者からロタウイルスワクチンの定期接種が開始されます。このロタウイルスワクチンは、現在定期接種で行われている他のワクチンとは異なり、腸重積症の発症という副反応に注意して、細かい取り決めがあります。
■1. ロタウイルスワクチンは2種類ある
ロタウイルスワクチンは経口投与、いわゆる、飲むワクチンです。経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン(ロタリックス)と5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン(ロタテック)があります。どちらを使用するかは、接種を受けるクリニック・病院やその自治体によって決まっていることが多いです。どちらを接種したかは、母子健康手帳に書かれますので、確認しましょう。
■2. 2種類のロタウイルスワクチンは接種回数が異なる
ロタリックスは、2回の接種、ロタテックは、3回の接種を行います。
■3. 初回接種時期が決まっている
どちらの種類でも、初回接種は、生後2月に至った日から生後14週6日までの間を標準としています。この標準的な接種期間が設定された理由は、生後15週以降に初回接種を行った場合に、腸重積症の発症リスクが増加する調査結果に基づいています。
■4. 接種終了時期が決まっている
ロタリックスは、2回の接種を生後24週0日(生後6か月)までに、ロタテックは、3回の接種を生後32週0日までに(生後8か月)までに終了させる必要があります。
■5. 原則として、一度開始すると同一種類のワクチンで完遂する
ロタリックスまたはロタテックのいずれか同一製剤で接種を完了する必要があるため、里帰り出産後、自宅へ戻る時や転居により、別の地域で接種を継続する場合は、予約の際、母子健康手帳に記載されている製剤の種類を伝えるようにしましょう。
■6. 腸重積症を疑う症状を知っておく
生後14週6日までの間に初回接種を行う理由は、ワクチンによる腸重積症の発症リスクを下げるためですが、生後 14 週 6 日までに初回接種を行えば、絶対、腸重積症の発症は起こらないというものではありません。また、ワクチンとは関係なく、腸重積症が起こる場合もあります。そのため、腸重積症を疑わせる症状として、不機嫌の持続、嘔吐、血便を知っておくとよいでしょう。
(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)