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2020.07.01 病原体

こどもの「3大夏風邪」:プール熱 著者:森岡 一朗

 

Withコロナで、保育園・幼稚園が再開しました。これから、夏になると増えてくる感染症があります。こどもの三大夏風邪とも言われる「プール熱」、「手足口病」、「ヘルパンギーナ」です。 今回は、その中の「プール熱」の素朴な疑問に答えます。

■Q.プール熱ってなに?

正式名称は咽頭結膜熱です。発熱、咽頭炎、眼症状を主とする小児の急性ウイルス性感染症であり、病原体は、数種の型のアデノウイルス(主に3型)です。通常夏期に地域で流行します。また、小規模アウトブレイクとして、散発的にも発生します。

■Q.どうして「プール熱」っていうの?

夏のプールが盛んな時期に感染することが多いため、「プール熱」と名付けられています。感染経路は、コロナウイルスで有名になりました感染している人の唾液や鼻水などの気道分泌物の接触・飛沫感染です。タオル、ハンカチ、ビート板なども媒介することがあります。また、実際プールで感染することもあり、プールを介した場合には、汚染した水から結膜への直接侵入と考えられています。そのため、プールの塩素濃度を適正(*)に維持することが対策となります。もちろん、プール以外の場所でも感染することがあります。
*適正とは:厚生労働省(遊泳用プールの衛生基準)より、水質基準として遊離残留塩素濃度が0.4mg/L以上、1.0mg/L以下とされています。

■Q.どんな症状が出るの?

高熱、咽頭痛、眼球結膜充血などの症状が出ます。発熱は持続日数が長くなりがちで(3~5日)、のども痛くなるため、水分や食事を摂りにくくなってしまうことがあります。

■Q.治療はどうするの?

抗菌薬は効かないウイルス感染症のため、対症療法のみです。解熱薬の投与を行う場合があります。また、 眼科的治療として点眼薬の投与が必要になることもあります。のどが痛く水分が摂れず、脱水の徴候が認められる場合は点滴を行います。

■Q.予防はどうするの?

感染者との密接な接触を避けること、流行時にうがいや手指の消毒を励行することがあげられます。共有物品や施設のこまめな消毒を行います。具体的には、よく手を洗うことが何より重要です。家族同士や友達同士でのタオル、ハンカチの共有や貸し借りは避け、個人専用としましょう。眼を拭くときはティッシュペーパーなどの使い捨てのものを使いましょう。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。

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