感染対策のポータルサイト「感染対策Online」
運営会社: Van Medical
2020.06.24 病原体

新型コロナウイルス第2波・第3波にそなえた感染対策(救急部門への受診)―うっかりやりがちな感染対策の間違い 著者:矢野 邦夫

 

新型コロナウイルスの第2波・第3波が発生した時、人々は病院に受診することを控えると思います。病院には新型コロナウイルス感染症の患者が受診しており、そこでウイルスに曝露することを心配するからです。また、行政も「不要不急の受診を差し控えましょう」と啓発することでしょう。しかし、これによって大きな問題が発生します。それは「生命を脅かす急性疾患」の患者であっても、受診を躊躇することです。

米国での調査によると、今回の流行での救急部門の受診者数は心筋梗塞で23%、脳卒中で20%、高血糖緊急症で10%減少しました(1)。このような減少は決して、疾患が減少したことによるものではありません。救急治療が必要であるにも拘わらず、受診しなかったことによるものです。それによって、新型コロナウイルス感染症が直接の死因となっていない死亡者の数が増えたのです。

このような疾患は治療が遅れると、生命を失う危険性があります。救急治療を早く開始するほど、生存の可能性が高くなるので、救急外来に迅速に受診する必要があります。そのためには「激しい胸痛がみられる」「手足の運動機能や言語機能が突然または部分的に喪失した」「精神状態が急に変化した」などの症状がみられる場合には、第2波・第3波に関係なく、救急外来に受診しなければなりません。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)Lange SJ et al:Potential indirect effects of the COVID-19 pandemic on use of emergency departments for acute life-threatening conditions — United States, January–May 2020.
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/pdfs/mm6925e2-H.pdf

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

一覧へ戻る
関連書籍・雑誌
救急医療の感染対策がわかる本

◆多種多様な患者の受け入れ、搬送から集中治療室までの場所の変遷、刻々と変わる状況など、
 多忙で非日常的な現場の事情を踏まえ、救急医療の感染対策を総合的に解説。
◆場所・経路・耐性菌・感染症・患者背景から医療従事者まで、ありとあらゆる角度から
 感染対策にアクセスできる、救急医療の現場のための一冊。

浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野邦夫 著
2019年10月刊

介護スタッフのための 高齢者施設の感染対策

◆感染対策分野のエキスパートが介護スタッフのために,高齢者施設で行うべき感染対策を
 わかりやすく具体的に解説!
◆介護現場の第一線で実践的に使える,マニュアル作りにも役立つ一冊!!

東京医科大学微生物学分野 主任教授 松本哲哉 編著
2016年3月刊

隔離予防策のためのCDCガイドライン- 医療環境における感染性病原体の伝播予防2007

◆世界中の感染対策の指針となるCDCガイドライン。
◆感染対策に精通する訳者が,独自の注釈を加え,ポイントをわかりやすく紹介!
◆感染対策必携の1冊!

公立大学法人 横浜市立大学附属病院 感染制御部 部長・准教授 満田年宏 訳・著
2007年11月刊