感染対策のポータルサイト「感染対策Online」
運営会社: Van Medical
2020.06.19 病原体

COVID-19の母親と乳児〔矢野邦夫タイムズ WHO COVID-19 ぷちREPORT No.15〕 著者:矢野 邦夫

 

母親が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患している場合、乳児に母乳を与えるべきかどうか判断に迷うことでしょう。授乳することによって、幼児にウイルスが伝播するのではないかと危惧するからです。WHOがCOVID-19に母親が罹患している場合の対応について記載しているので紹介します(1)。

最も大切なことは「母親がCOVID-19に罹患していても、母乳を乳児に与えるべきである」ということです。母乳の利点が感染の潜在的なリスクを大幅に上回るからです。母親がCOVID-19に罹患していたとしても、出産後1時間以内に乳児を母乳で育て始めるべきです。母親が重症のために乳児の世話をできない場合は母乳を搾乳して乳児に与えます。母親が母乳を与えられない場合、もしくは、母乳を搾り出すことができない場合は、人工乳などを利用することになります。授乳前には石鹸と水で乳房を洗いますが、すべての授乳前に乳房を洗う必要はありません。授乳時には医療用マスクを着用することも大切です。

また、母親と乳児は昼夜問わず一緒にいるべきであり、皮膚と皮膚の触れ合いを維持することが大切です。母親が乳児の世話ができないような病状の場合を除いて、母親は乳児から離れるべきではありません。乳児が病気で、専門的なケア(新生児病棟など)を必要とする場合は、適切な感染対策を講じて、母親が病棟に自由にアクセスできるようにします。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)WHO:Subject in Focus:Advice on feeding and caring for infants and young children of mothers with COVID-19.
https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200618-covid-19-sitrep-150.pdf?sfvrsn=aa9fe9cf_2

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

一覧へ戻る
関連書籍・雑誌
見える!わかる!! 病原体はココにいます。

◆病院内の各区域のどこに病原体が存在しているのか?
◆気を付けるべき場所と病原体を見える化したまったく新しい書籍!

浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科長 兼 衛生管理室長 矢野邦夫 著
2015年2月刊

救急医療の感染対策がわかる本

◆多種多様な患者の受け入れ、搬送から集中治療室までの場所の変遷、刻々と変わる状況など、
 多忙で非日常的な現場の事情を踏まえ、救急医療の感染対策を総合的に解説。
◆場所・経路・耐性菌・感染症・患者背景から医療従事者まで、ありとあらゆる角度から
 感染対策にアクセスできる、救急医療の現場のための一冊。

浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野邦夫 著
2019年10月刊

感染対策ICTジャーナル Vol.15 No.2 2020 特集:技術進歩とともに進化する  軟性内視鏡の感染管理

編集:東京女子医科大学医学部感染制御科 教授/同大学病院感染制御科 診療部長 満田 年宏
   山形大学医学部附属病院検査部 部長 病院教授・感染制御部 部長 森兼 啓太
   自治医科大学附属病院感染制御部長・感染症科(兼任)科長,自治医科大学感染免疫学 准教授 森澤 雄司


2020年4月刊