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2020.04.22 病原体

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の母親から出生した新生児の感染対策 著者:森岡 一朗

 

新型コロナウイルスの主要な感染経路は、飛沫・接触感染であり、長時間の物理的接触や密接な接触(2m以内)が高感染リスクです。免疫システムが未熟な新生児は、新型コロナウイルス感染により重篤な疾患を引き起こす可能性があることが懸念されています(1)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の母体から出生した新生児を、どのようにして新型コロナウイルスから守る感染対策を講じるかは議論が続いています。2020年4月2日に発出されたアメリカ小児科学会のガイダンスを紹介します(1)。

■1.個人防護具(PPE)と隔離予防策

  • COVID-19の妊婦の分娩に立ち会い時は、バッグマスク・気管挿管・気管吸引・2 L/min以上の経鼻酸素・持続陽圧呼吸療法(CPAP)・陽圧換気時はエアロゾルが発生する可能性があるため、空気・飛沫・接触感染予防策も実施する。
  • COVID-19母体から出生した新生児については、PCR検査で陰性を確認するまでは飛沫・接触感染予防策を実施する。

●新生児のPCR検査

検査の適切な時期や期間はまだわかっていないが、現時点は以下の通り推奨される。
-初回は出生後24時間以内に行う。
-再検査は生後48時間までに行う。初回検査が陰性であったが、48~72時間で陽性化した報告がある。
-同一スワブで咽頭→鼻咽頭の順で擦過する。
-特に長期入院する場合は、直腸擦過検体を追加することを検討する。
-もし24時間あけた検査で連続してPCR陰性ならば、標準予防策に移行しても良いかもしれない。
-もし初回検査が陽性であった場合、48~72時間間隔で2回連続の陰性まで再検査すべきである。

■2.分娩と新生児の処置

・母親が新型コロナウイルス陽性というだけで新生児チームが立ち会う必要はない(このことはPPEの節約にも役立つ)。
・出生後、新生児はできるだけ早期に沐浴し、皮膚表面のウイルスを除去する。
・物理的環境が許せば、新生児は母親から隔離する必要があり、一時的な母子の分離は母の呼吸器分泌物から新生児へ感染するリスクを最小限に抑制するかもしれない。

■3.出生児の感染対策

・全身状態のよい正期産または後期早産児は、新型コロナウイルスに感染していない母親から出生した新生児から離れた場所に入室する。
・新生児集中治療室(NICU)に入室する場合は、個室できれば陰圧個室(または他の空気濾過システム)が望ましい。個室管理が難しければ、他児より約2 mの距離を離す。または、空気温度制御が分離された場所に収容する。
・CPAP以上の呼吸管理を行う場合は、陰圧個室管理にて、空気・飛沫・接触感染予防策を実施する。

以上のように米国では推奨されていますが、NICU内に陰圧個室を有している施設が少ない我が国において、エアロゾルが発生する呼吸障害を有する新生児をどのようにして管理すべきか早急な検討が必要です。

〔文献〕
(1)Puopolo KM, Hudak ML, Kimberlin, DW, et al. Initial guidance: Management of Infants Born to Mothers with COVID-19 (Date of Document: April 2, 2020) https://downloads.aap.org/AAP/PDF/COVID%2019%20Initial%20Newborn%20Guidance.pdf#search=%27Management+of+Infants+Born+to+Mothers+with+COVID19%27 2020年4月18日アクセス.

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。

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