米国において抗体検査を住民に実施したところ、実際の感染者は報告されている数よりもずっと多いかもしれないとの報道があります。COVID-19の検査として、RT-PCRと抗体検査がありますが、どのように使い分けるのでしょうか? また、抗体検査の感度や特異度はどうなのでしょうか? 感度や特異度が低ければ、その結果の信頼度は低いものとなります。
COVID-19の診断としてはRT-PCRが実施され、退院時の条件としても「症状の軽快後、24時間後にPCR検査を実施し、陰転化が確認されたら、前回検体採取後24時間以後に再度採取を行い、二回連続で陰性が確認されたら退院可とする」とされています。すなわち、COVID-19が治癒するまではRT-PCRは役立つけれども、治癒した後は利用できないのです。このことは、感染していても、無症状であったり、症状が軽すぎて感染したことに気づいていない人々で発症から数週間経過していれば、RT-PCRは役立たないことになります。したがって、感染の既往の確認には、RT-PCRではなく、抗体検査が必要ということになります。抗体検査の信頼度について、感染症専門誌「Clinical Infectious Disease」に報告がありました(1)。
この研究では、SARS-CoV-2(COVID-19の原因ウイルス)に対する抗体が酵素免疫測定法(ELISA)を用いて測定されました。IgMおよびIgG抗体は発症後4日目から観察され、COVID-19の中期および後期で検出できました。その感度(COVID-19に罹患している人の中で、検査が陽性になった人の割合)、特異度(COVID-19に罹患していない人の中で検査が陰性となった人の割合)、陽性的中率(検査が陽性となった人の中でCOVID-19に罹患している人の割合)、陰性的中率(検査が陰性となった人の中でCOVID-19に罹患していない人の割合)はIgMでは77.3%、100%、100%、80.0%であり、IgGでは83.3%、95.0%、94.8%、83.8%でした。すなわち、COVID-19の抗体検査の結果は極めて良好であり、その信頼度は高いと言えます。この検査によって、過去の感染者の数が明らかになれば、COVID-19の真の致死率も明確になってくるものと思われます。
〔文献〕
(1)Xiang F et al:Antibody Detection and Dynamic Characteristics in Patients with COVID-19.
https://academic.oup.com/cid/article/doi/10.1093/cid/ciaa461/5822173