医療従事者は日常生活では「Withコロナ」、病院内では「Zeroコロナ」であることを理解することが大切です。通勤や買い物などの院外での行動では、マスクなしで構いません。また、友人とビアガーデンなどに行って楽しむことも可能です。もちろん、発熱や咳などがあれば咳エチケットとしてマスクの着用は求められます。しかし、病院や高齢者施設などでは高齢者や基礎疾患のある人々が多く滞在しています。そのようは人々が新型コロナに感染すると、発熱と食欲低下によって脱水となったり、誤嚥性肺炎を併発したりして重症化することがあります。そういった事態は是非とも避けなければなりません。
したがって、新型コロナが5類に移行したとしても、病院内ではコロナ禍の期間に実施してきた感染対策(ユニバーサルマスキング、身体的距離、手指消毒、換気)のほとんどを継続する必要があります。このような対策の継続の必要性は医療従事者のみならず、病院内に立ち入るすべての人々(面会者、外来患者、業者など)に徹底することが大切です。その結果、日常生活において「Withコロナ」に馴れている人々が病院の入り口でマスクの着用を求められると不快を感じてトラブルとなることもあるでしょう。そのようなことを避けるためにも、病院の目立つところに、マスクや手指消毒の必要性を掲示しておきます。ただし、施設の入り口での体温測定は必要ないと考えます。発熱があったとしても、そのほとんどを検出できないからです。
新型コロナのワクチンについては、接種の案内が来た高齢者には必ず接種するように啓発します。重症化を防ぐためにもワクチンの接種を最新の状態にしておくことが大切だからです。医療従事者も同様であり、接種の案内が来た場合には是非とも接種します。重症化しやすい人々に周囲の人からウイルスが伝播しないために最善を尽くす必要があります。
(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫)