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2023.02.08 病原体

新型コロナ エアロゾル感染に対する換気のポイント―医療・介護現場で役立つ最新情報 著者:高野 知憲

 

医療・介護現場では様々な職種の方々が感染対策を実施しているにも関わらず、病院や高齢者施設での新型コロナウイルス感染症のクラスターが後を絶ちません。今回はエアロゾル感染の話を中心にして、新型コロナウイルス感染症の感染対策について解説します。

■エアロゾルとは

人は、くしゃみ、咳、会話、呼吸などで口や鼻から様々な大きさの粒子を空気中に放出します。空気中に放出された粒子は、その大きさにより飛距離や空気中の滞在時間が変化します。

特に、換気の悪い密閉空間や湿度が低い環境では飛沫中の水分が蒸発することで1~5μm程度のエアロゾルと呼ばれる粒子となることが知られています。エアロゾルは空気中に長時間浮遊するため、その粒子を吸い込むことでエアロゾル感染が起こります(1)。

■エアロゾル感染に対する換気の視覚化

換気に関しては、1人につき1時間で30m3(一般的な住宅なら畳6枚分くらいの空間)の空気を換気する必要があります。しかし、30m3の換気と言っても分かりにくいのが問題です。換気の視覚化の方法として室内の二酸化炭素(CO2)濃度をCO2センサーを使用して測定する方法があります。CO2センサーの測定値を800ppm以下に維持することが新型コロナウイルス感染症を含めた感染症の感染予防に有効です(2)。さらに、イベント開催時等の感染対策に有用なツールも紹介します。COVID-19曝露評価ツール(COVID-19 Exposure Assessment Tool:CEAT)は、10項目の評価項目から構成され、それぞれにデータを入力することで、適切な感染予防策の提案(不織布マスクの着用やN95マスクの着用)、屋内屋外のどちらでイベントを開催すべきか、参加人数を調整すべきかなど具体的な感染対策を得られます(3)。

■エアロゾル感染に有効な換気方法

食堂やホールなど複数人が集まる場所においては、CO2センサー測定値が800ppm以下を維持できるように換気を行うことが重要です。特に冬場などで窓開けが難しいときは、換気扇を使用した換気や空気清浄機による換気も有効です。空気清浄機を使用する場合は5m3/分以上の風量とHEPAフィルタを備えているものを選ぶとよいです(4)。CO2センサーやCEATを利用しながら適切な換気と感染対策を行うことでエアロゾル感染対策を実施していただければ幸いです。

(著者:聖マリアンナ医科大学感染症学講座 高野知憲)

〔文献〕
(1)Gesellschaft für Aerosolforschung(GAeF):Position paper of the Gesellschaft für Aerosolforschung on understanding the role of aerosol particles in SARS-CoV-2 infection, 2020 
https://ae00780f-bbdd-47b2-aa10-e1dc2cdeb6dd.filesusr.com/ugd/fab12b_0b691414cfb344fe96d4b44e6f44a5ab.pdf

(2)Zemouri C, Awad SF, Volgenant CMC et al:Modeling of the Transmission of Coronaviruses, Measles Virus, Influenza Virus, Mycobacterium tuberculosis, and Legionella pneumophila in Dental Clinics. J Dent Res 99(10):1192-1198, 2020

(3)Schimmoller BJ, Trovão NS, Isbell M et al:COVID-19 Exposure Assessment Tool (CEAT): Exposure quantification based on ventilation, infection prevalence, group characteristics, and behavior. Sci Adv 8(39):eabq0593, 2022

(4)Allen JG, Ibrahim AM:Indoor Air Changes and Potential Implications for SARS-CoV-2 Transmission. JAMA 325(20):2112-2113, 2021

著者プロフィール

高野 知憲(たかの とものり)

聖マリアンナ医科大学感染症学講座

Infection Control Doctor。新型コロナウイルス感染症の疫学・重症化リスクの研究、ワクチン接種におけるImmunization Street Related Responseのリスク因子の研究、Biofilmと難治性感染症に関する基盤的研究を行っている。

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編集:
東京女子医科大学医学部感染制御科 教授/同大学病院感染制御科 診療部長 満田 年宏
山形大学医学部附属病院検査部 部長 病院教授・感染制御部 部長 森兼 啓太
住友商事診療所 所長 森澤 雄司


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