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2023.01.16 病原体

新型コロナ オミクロン株「XBB.1.5」の特徴―医療現場で役立つ最新情報 著者:矢野 邦夫

 

現在、米国においてオミクロン株「XBB.1.5」の感染者が急速に増加しています。XBBはBJ.1株(BA.2.10株の亜系統)とBM.1.1.1株(BA.2.75.3株の亜系統)の組み替え体です。そして、XBB.1.5はXBBの亜系統です。2022年10月22日から2023年1月11日までに、XBB.1.5は38か国から報告されており、これらのほとんどは米国(82.2%)、英国(8.1%)、デンマーク(2.2%)からのものです。ここではXBB.1.5について現時点で判っていることを説明します。

■増加スピード

米国では地域差はあるものの、変異株全体のなかでのXBB.1.5が占める割合は増加しています。実際、第47週では1%(95%CI 0.3-2.2%)であったものが、第50週では8%(95%CI 3.4-15.3%)に増加しました。特に、米国の北東部で急速にその割合が増加しています。

■免疫回避

BQ.1とともに、XBBはこれまでで最も抗体に抵抗性のある変異株です。XBB.1.5は、最高の免疫回避を示すXBB.1と同等の免疫回避性があることが示されています。実際、「BA.1、BA.5、BF.7のブレークスルー感染した人」「不活化ワクチン(Coronavac)を3回接種した人」「mRNA ワクチン(BNT162b2またはmRNA-1273)の3回または4回の接種後にBA.5感染した人」からの血清は、XBB.1.5に対して高い中和力価を示しません。現時点では、重症疾患または死亡に対する実際のワクチンの有効性に関するデータはありません。

■重症化・死亡

重症化や死亡についてのデータはありません。ただし、XBB.1.5には、潜在的な重症度の変化に関連することが知られている変異(S:P681Rなど)がないことが知られています。

■リスク評価

遺伝的特徴と初期の増加率の推定に基づくと、XBB.1.5は世界的な症例発生率の増加に寄与する可能性があります。

(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫)

〔文献〕
(1)WHO:Weekly epidemiological update on COVID-19 – 11 January 2023.
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19—11-january-2023
(2)CDC:COVID Data Tracker Weekly Review.
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/covid-data/covidview/

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「アフターワクチンの新型コロナ感染対策」「感染対策超入門―成功の秘訣」「がっちり万全な 新型コロナ感染対策 受験編20」「ばっちり安心な 新型コロナ感染対策 旅行編20」「うっかりやりがちな 新型コロナ感染対策の間違い15」「7日間できらりマスター 標準予防策・経路別予防策と耐性菌対策」(以上、ヴァン メディカル刊)など。

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