オミクロン株による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第6波が拡大中です。オミクロン株は病原性が低いとは言え80歳以上の高齢者では重症化し易く(1)、ようやく登場した経口治療薬を軽症の内に早期投与できるようにしなければなりません。一方で、ワクチン接種も進展させなければなりません。医療従事者と施設の高齢者に続いて、一般の高齢者の3回目の接種も始まりますが、この追加接種はオミクロン株に対して効果があるのでしょうか? 基礎的、臨床的な成績が出始めました。
米国のSchmidtら(2)は、mRNAワクチン既接種または未接種で既感染の計47例の169血漿検体を用いて武漢株とオミクロン株に対する中和抗体価(成績はNT50[50% Neutralizing Titer]で表示)を測定しています。既感染者の多くとワクチン接種完了者の5~6か月後のオミクロン株に対するNT50は低いか検出不可能になっていましたが、その約1か月後の追加接種によってNT50がそれぞれ平均154倍および38倍上昇しました。中和活性は期待できるようです。なお、武漢株では、2回接種から5~6か月経過時のNT50値の低下が比較的少なく、追加接種後のNT50もオミクロン株の場合より高い値でした。
英国のUKHSA(UK Health Security Agency)は、デルタ株と比べたオミクロン株のCOVID-19発症に対するワクチン効果や入院予防効果を報告しています(3)。オミクロン株に感染した20万4,036例とデルタ株に感染した16万9,888例のデータを解析したものです。2回接種完了後、ワクチンの種類を問わずオミクロン株に対する発症予防効果はデルタ株の場合よりかなり低くなりましたが、mRNAワクチン(ファイザー製もしくはモデルナ製)を追加接種して2~4週後には発症予防効果が65~75%に改善し、5~9週後には55~70%になっていました。また、オミクロン株感染例では、ワクチンの種類を問わず、2回接種完了から25週後には平均52%に低下していた入院予防効果が、3回目接種から2週間後には88%に改善していました。
以上のように、追加接種の効果はデルタ株の場合よりやや低いものの、オミクロン株でも確実に見られます。追加接種に伴う副反応の種類と程度は、2回目接種時とほぼ同等という報告が多いようですから、順番が来たら接種を受けるようにしたいものです。
〔文献〕
(1)三和 護:沖縄の第6波から見えてきた重症度の実際―80歳以上では中等症7割、若者にとってはインフルエンザ様.
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/miwa/202201/573464.html?n_cid=nbpnmo_mled
(2)Schmidt F et al:Plasma neutralization of the SARS-CoV-2 Omicron variant. New Engl J Med. Dec 30, 2021. [Epub ahead of print]
(3)UK Health Security Agency:SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England, Technical briefing: Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01(B.1.1.529). Dec 31, 2021.
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1045619/Technical-Briefing-31-Dec-2021-Omicron_severity_update.pdf