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2022.01.12 病原体

「オミクロン株はデルタ株よりインフルエンザに近い」と考える理由 著者:藤田 次郎

 

感染症・呼吸器内科医としてこれまで多くの呼吸器感染症を見てきました。新型コロナウイルス感染症の第5波(デルタ株が主体)では多くの重症肺炎患者の診療に当たり、人工呼吸管理、またはECMO管理を追加したにもかかわらずお亡くなりになる方もありました。沖縄県では、年末・年始に、米軍の感染管理が日本のオミクロン対応と異なっていたこともあり、真っ先にオミクロン株の流行を経験しました。これまでに当院(琉球大学病院)で入院患者約30例を経験しましたが、肺炎の頻度が少ない、またあっても軽微なことから、臨床医の感覚ではデルタ株とオミクロン株は全く異なる疾患です。

デルタ株は上気道に加えて、下気道をも病変の場とするため高率に肺炎を合併します。肺炎を合併すると肺胞からデルタ株が侵入し、ウイルス血症(細菌であれば敗血症)を引き起こします。血管の中にウイルスが流れるので血管炎を合併して全身感染症としての様相を呈します。一方、オミクロン株は上気道で増殖したウイルスが症状を示すため、インフルエンザとよく似た症状を示します。1月11日時点で沖縄県の重点医療機関に250名以上の症例が入院していますが、人工呼吸管理を行っている方は0です。

オミクロン株が社会へ与える影響について示したいと思います。人類はこれまでにほぼ毎年のようにインフルエンザの流行を経験しました。インフルエンザ診療でPCR検査を実施することは稀であり、また濃厚接触者という概念もありませんでした。沖縄県の医療現場の混乱は、インフルエンザと似た臨床像のオミクロン株に、デルタ株に代表される重症の新型コロナウイルス感染症の対応を求めていることにあります。もちろん感染症・呼吸器内科医としては、しっかり感染対策を実施して、患者数を減らしたいという気持ちはあるのですが、あまり厳しい対応をすると社会のインフラが維持できなくなります。このバランスを保つのが政治の役割と考えています。

〔著者:琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授 藤田 次郎〕

著者プロフィール

藤田 次郎(ふじた じろう)

琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授

日本呼吸器学会理事、日本感染症学会監事、日本結核病学会理事、昭和56年岡山大学医学部卒業。虎の門病院レジデント、国立がんセンター病院レジデント、および2年間の米国ネブラスカ医科大学留学を経て昭和62年より香川大学医学部に勤務。平成17年5月から琉球大学大学院 感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授。平成27年4月からの4年間は琉球大学医学部附属病院長。感染症、呼吸器関連の著書は30冊を超える。

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