テレビのお笑い番組で「〇〇とかけて、何と解く。その心は?」というコーナーがあります。例えば、「クジラとかけて、犬と解く」「その心は、ホエール[whale](吠える)」となります。かなり無理な結びつきかもしれませんが、納得できればそれでいいのです。
それでは「標準予防策とかけて、何と解く。その心は?」はどうでしょうか? その解答には様々なものがあると思いますが、「標準予防策とかけて、『携帯電話』と解く。その心は、日常的に必須のものであるが、コストがかかる」となります。現代では携帯電話はなくてはならない日常品となっています。これがなければ、友人との待ち合わせのための連絡は取れないし、メールも受け取れません。映画館などの予約も難しくなります。一方、毎月の費用が何千円も必要ですし、ギガを多く消耗すると一万円を超えることもあります。最近、若者が車を買わないし、スキー・スノボにも行かないのは、携帯電話でお金を消耗しているからだなどという意見もあるくらいです。携帯電話料金を下げるために総務省が頑張っているのは嬉しく思います。
標準予防策を無くして、感染対策は成り立ちません。これは外来や病棟での必須の感染対策であり、手術室や検査室でも例外ではありません。携帯電話は数多くの部品で組み立てられていますが、標準予防策も「手指衛生」「個人防護具」「環境清掃」など多くの感染対策で組み立てられています(1)。それらを実施するのには保険適用されていない費用が発生します。手指消毒のアルコールや手洗い場のペーパータオル、手袋やガウンなどの個人防護具は病院全体でかなりのコストを要します。必須の対策であるが、コスト高であることが携帯電話に似ているところです。
〔文献〕
(1) CDC:2007 Guideline for isolation precaution: Preventing transmission of infectious agents in healthcare setting.
https://www.cdc.gov/infectioncontrol/pdf/guidelines/isolation-guidelines-H.pdf
(著者:浜松市感染症対策調整監/浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野 邦夫)
【掲載】
2021年10月刊行新刊書籍「感染対策超入門―成功の秘訣」(矢野邦夫 著,ヴァンメディカル刊)より
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