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2021.03.19 領域・分野別

感染症の専門家の役割 著者:藤田 次郎

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、この感染症の話題がマスコミでも大きく取り上げられました。一般の方へのアドバイスとして、「専門家をどのように定義するのか」という視点を持ってほしいと思います。私見ですが流行の始まった昨年2月時点では、COVID-19の専門家は一人もいなかったと思います。このため、「この感染症にはマスクは不要」とか、「暖かくなれば、この感染症は終息」などというコメントが堂々と報道されました。

私の考えるCOVID-19の専門家は、この感染症を、100症例以上、実際に自身で経験した臨床医です。患者を診療していない先生方にこの感染症のことを語ってほしくありません。まず「自称」専門家が登場したら、「この先生は実際に患者さんを診ているのだろうか」という疑問を持ってください。一つの判断材料として、平日の昼間にテレビのワイドショーに出演している「自称」専門家は患者さんを診ていません。なぜなら病棟で、COVID-19と戦っている同僚がいる状況で、マスコミに出る心理状態にはなりえません。マスコミの方の責任も大きいと感じていますが、一般の方々にも「本当の専門家」を正しく判断して欲しいと思います。

私は約1年間、マスコミからの取材を断ってきました。自身が診療した症例が100例を超えるようになり、ようやく自分も「本当の専門家」と言えるようになったかなと感じるようになり、最近では新聞の取材等に応じています。これまで取材を断ってきた理由は、私にとっても得体の知れない感染症であり、誤った情報を発信することを恐れたからです。また沖縄県の専門家会議の座長を務めているので、私の発言が行政の混乱を招くことも危惧しました。現時点でも、「いつ終息するのか」、「若者が重症化しないのはなぜか?」、「変異ウイルスの動向は?」など、まだまだ私にとっても分からないことだらけです。

(著者:琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授 藤田 次郎)

著者プロフィール

藤田 次郎(ふじた じろう)

琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授

日本呼吸器学会理事、日本感染症学会監事、日本結核病学会理事、昭和56年岡山大学医学部卒業。虎の門病院レジデント、国立がんセンター病院レジデント、および2年間の米国ネブラスカ医科大学留学を経て昭和62年より香川大学医学部に勤務。平成17年5月から琉球大学大学院 感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 教授。平成27年4月からの4年間は琉球大学医学部附属病院長。感染症、呼吸器関連の著書は30冊を超える。

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