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2021.01.26 病原体

目で見る病原体 ④黄色ブドウ球菌 著者:斧 康雄

 

69歳の女性で、発熱、血圧低下などのショック状態で搬入されました。入院時、39℃の高熱と血圧低下、右膝関節の発赤腫脹、黄疸、血小板減少、肝・腎機能障害を認めました。化膿性膝関節炎と敗血症性ショックと診断し、膿性の関節穿刺液のグラム染色で多数の好中球と好中球に貪食されたグラム陽性球菌を認めました。

本例は、血液培養と関節液から薬剤感受性の黄色ブドウ球菌が検出され、本菌による敗血症性ショックと診断した症例で、同時に右膝関節炎と左腸腰筋膿瘍を合併し、多臓器不全も併発していました。患者は、易感染性をきたす基礎疾患を有しておらず、外科的処置、注射、外傷などの既往もなく、問診などからも菌の侵入門戸は不明でした。本例は、関節液の性状やそのグラム染色所見から黄色ブドウ球菌が起炎菌と推定できました。感染性関節炎は、黄色ブドウ球菌以外にも、淋菌、肺炎球菌、β溶血性レンサ球菌、腸内グラム陰性桿菌などが起炎菌となりますが、抗酸菌、スピロヘータ、真菌、ウイルスなども稀に原因となります。また、感染経路は血行性感染が最も一般的で、ほとんどの病原菌は敗血症性関節炎を起こし得ますが、その中でも黄色ブドウ球菌はすべての年齢にみられる最も多い起炎菌です。一方、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌による感染性関節炎のほとんどは、人工関節置換術後や関節鏡検査などに続発して起こるものです。関節液の性状では、好中球数が平均10万個/μL(2.5万~25万個/μL)で、その90%以上が好中球であれば、細菌による急性感染症を示唆する所見とされています。急性細菌性関節炎の90%は単関節の障害で、多くは膝関節、次いで股関節にみられ、高率に関節液のグラム染色や培養で菌が陽性となるので、穿刺による関節液のグラム染色と培養検査は、抗菌薬投与前に血液培養とともに実施すべきです。

著者プロフィール

斧 康雄(おの やすお)

帝京大学医学部微生物学講座 主任教授

感染症専門医/指導医、総合内科専門医、消化器病専門医、抗菌化学療法指導医、ICDなど。徳島大学医学部1981年卒業、医学博士(東京大学)。

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