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2021.01.25 病原体

目で見る病原体 ③肺炎桿菌 著者:斧 康雄

 

64歳女性の気管吸引した膿性痰のグラム染色像です。好中球と厚い莢膜を有する、やや大型のグラム陰性桿菌が多数みられます。頭部外傷で人工呼吸管理下にあり、感染予防のためアンピシリン/スルバクタム (ABPC/SBT) 6g/日の点滴治療を受けていましたが、発熱し、胸部X線写真で肺炎と診断されました。

肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae:クレブシエラ・ニューモニエ)は、健常人には通常無害ですが、感染防御能の低下したcompromised hosts(易感染宿主)の院内肺炎や市中肺炎の起炎菌となります。呼吸器感染症以外にも、尿路系や胆道系の感染症、腹膜炎、創部感染症、菌血症など種々の感染症を起こします。セフェム系薬やカルバペネム系薬、ニューキノロン系薬の開発により、クレブシエラ肺炎の治療成績は改善していますが、本邦においてもカルバペネマーゼ(KPC)を産生する多剤耐性株も少数ながら分離されており、医療関連感染に注意が必要です。本菌は腸内細菌科に属するグラム陰性の短桿菌で、厚い莢膜を有しています。クレブシエラ肺炎は、アルコール依存症、糖尿病、肝硬変、慢性の肺・心・腎疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患を有する患者や人工呼吸器装着患者などに日和見感染症として発症します。一般的に、健常成人における本菌の咽頭への定着頻度は1~6%といわれていますが、アルコール依存症患者ではその頻度は約5倍高くなり、ペニシリン系薬の投与を受けた患者、気管内挿管されている患者、意識障害を有する患者などでも定着の頻度が高くなります。したがって、上記の基礎疾患を持つ患者に本菌の咽頭定着が起こり、ペニシリン系薬が投与された場合に本菌が選択的に増殖し、下気道への誤嚥や気管内挿管に伴う下気道への落下によって肺炎が発症する可能性があります。診断には喀痰のグラム染色が有用で、厚い莢膜を有する比較的大型のグラム陰性桿菌が、多数の好中球と同時に観察されますが、確定診断には培養同定検査が必要です。

著者プロフィール

斧 康雄(おの やすお)

帝京大学医学部微生物学講座 主任教授

感染症専門医/指導医、総合内科専門医、消化器病専門医、抗菌化学療法指導医、ICDなど。徳島大学医学部1981年卒業、医学博士(東京大学)。

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