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2020.08.06 病原体

新型コロナ vs インフルエンザ どちらが勝つか?―専門医が先読み!冬の同時流行 著者:渡辺 彰

 

本年7月以降、わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は第2波と言ってよい流行の拡大局面に入りました。そのような中、この冬にはCOVID-19とインフルエンザが同時に流行して医療体制はますますひっ迫するという観測も出ています。それを受けて 8月3日、日本感染症学会はホームページ上に「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」という提言(1)を掲載しました。もし同時に流行するような場合には、この提言に示されたインフルエンザとCOVID-19の見分け方や検査の進め方などが大きな参考になると思われます。しかし、本当に同時流行が起きるのでしょうか?

わが国の昨シーズンのインフルエンザは、早々と12月下旬にピークを迎えて700万人規模の小流行に終わるという特異なシーズンとなり、世界も同様でした。COVID-19に対する飛沫感染対策や手指衛生等の予防策がインフルエンザ流行の抑制につながったという見方と共に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の出現がインフルエンザの流行に干渉した(2)という見方があります。2つとも同じ呼吸器ウイルスですから、生存競争は熾烈です。しかし、インフルエンザに関しては、過去の罹患や毎年のワクチン接種で多くの人が免疫を有しており、一方のCOVID-19にはまだほとんどの人が免疫を持ち合わせていません。インフルエンザシーズンであってもCOVID-19が優勢に流行すると思われます。示唆する例があります。

南半球のオーストラリアのインフルエンザのピークは毎年8月です。しかし、昨年は6月末~7月初めにピークを迎えて、その後、8月に一時再増加して秋には終息しました。今年はどうでしょうか? オーストラリアの保健当局の発表では、例年の流行が本格的となる7月下旬になってもインフルエンザの確定患者や入院患者はほとんど見られません(3)。一方のCOVID-19は都市ごとのロックダウンが再び行われるなど再流行の様相です。また、わが国の沖縄はいつも夏にインフルエンザの小流行がありますが、今年はインフルエンザの患者が極めて少ないという情報もあります。今年の冬はインフルエンザがあまり流行せず、COVID-19が優勢に流行する可能性が高いと思われますので、飛沫感染対策や手指衛生等の予防策をますます励行したいものです。

(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)

〔文献〕
(1)一般社団法人日本感染症学会:今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて.http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=41
(2)Lina B:Clinical manifestations of COVID-19, influenza and RSV: full webinar.  https://vimeo.com/432055343
(3)Australian Government Department of Health:Australian influenza surveillance report No.8, 2020, 13 July to 26 July 2020. https://www1.health.gov.au/internet/main/publishing.nsf/Content/5F27336697A16499CA2585B60001ED37/$File/flu-08-2020.pdf

 

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授
公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。

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東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授 渡辺 彰
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