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2020.06.08 病原体

新型コロナウイルス第2波・第3波にそなえた感染対策(レジのビニールカーテン)―うっかりやりがちな感染対策の間違い 著者:矢野 邦夫

 

衣料品やコンビニなどのカウンターで「新型コロナウイルス感染予防のためにレジカウンターにてお客様と従業員の間にビニールカーテンを設置しております。皆様のご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします」などと掲示され、実際にビニールカーテンが置かれています。これは客の口や鼻から飛び出す飛沫から従業員を守るために設置されたものと思われます。しかし、ほとんどのカウンターは「客⇒従業員」の感染予防策は実施するものの、「客⇒客」にウイルスが伝播することには無頓着のようです。

ウイルスはプラスティックの上で最大3日生存できます(1)。客が新型コロナウイルス感染者であった場合、ビニールカーテンの上にその客からのウイルスが付着し、そこで3日間生存することとなります。ウイルスが生存している期間に別の客の手指がビニールカーテンに触れると、その手指にウイルスが付着し、そのまま眼や鼻を擦れば感染してしまいます。すなわち、ビニールカーテンを設置するならば、そこはドアノブなどの「手指の高頻度接触表面」のように頻回にふき取りや消毒する必要があるのです。

しかし、ビニールカーテンを適切にふき取ったり、消毒したりすることはできません。また、多忙な業務のなかで、そのようなところを頻回に清掃することもできないことでしょう。すなわち、カウンターにビニールカーテンを安易に設置することは新型コロナウイルス対策としては不適切といえます。

社会的距離を空けることの重要性が強調されており、WHO(世界保健機関)やユニセフはその距離を「1m以上」としています(2,3)。厚生労働省も「最低1m(できるだけ2m)」としています(4)。実際、カウンターでの従業員と客の距離は1m以上です。それに加え、客も従業員もマスクをしています。そのため、ビニールカーテンが本当に必要かについて再考すべきと思われます。少なくとも、設置してから一度も洗浄や消毒をしないビニールカーテンは適切ではないことは明らかです。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)Doremalen NW et al:Aerosol and surface stability of HCoV-19 (SARS-CoV-2) compared to SARS-CoV-1.
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.09.20033217v2.full.pdf
(2)Unicef:Physical not social distancing.
https://www.unicef.org/sudan/press-releases/physical-not-social-distancing
(3)WHO:Q&A on coronaviruses (COVID-19).
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/question-and-answers-hub/q-a-detail/q-a-coronaviruses
(4)厚生労働省:新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を公表しました.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html

著者プロフィール

矢野 邦夫(やの くにお)

浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長

インフェクションコントロールドクター,日本感染症学会専門医・指導医。感染制御の専門家として多くの著書・論文を発表している。主な書籍に「救急医療の感染対策がわかる本」,「知って防ぐ!耐性菌 ESBL産生菌・MRSA・MDRP」(ヴァン メディカル刊)など。

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