新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗体検査が話題になっています。4月には、ニューヨークの約3,000名の市民の13.9%、感染者が少ないカリフォルニアでも4.1%が抗体陽性で、公式報告の感染者数の10倍は感染しているようだとされていました。日本では6月に入り、厚生労働省の主導で東京都・大阪府・宮城県の一般住民の計1万人前後を対象に抗体保有率調査が始まりました。カリフォルニアより低い結果が出るかもしれません。
最近、巨人軍の坂本・大城の両選手が抗体検査で陽性となり、次いで行ったPCR法による抗原検査で一時、微陽性とされました。抗原検査と抗体検査とは何が違うのでしょうか? 抗原検査は、鼻腔拭い液や唾液から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のみが持つ特有の成分を検出するものであり、陽性ということは、症状の有無に関わらず、現在感染していることを示します。主に使われるPCR検査は、SARS-CoV-2に特有の遺伝子配列を検出するものですが、COVID-19の発症者に濃厚接触した方々のPCR検査で多数の無症候感染者が見つかっています。感染しながら発症せずに免疫を形成していくものと考えられますが、抗体陽性者が増えてくれば感染の広がりは抑えられます。これを集団免疫といいます。
一方、抗体検査は、病原体と戦う免疫で重要なIgGやIgMなど血中の免疫グロブリンを測定するものであり、ヒトの免疫機能の全てではありませんが、免疫の最も主要な部分を表しています。それが陽性であれば、過去にCOVID-19に感染したことを意味しますが、IgMは感染後早期に体内に出現し、IgGは少し遅れて出現します。ただ、「抗体陽性=感染しない」の確率はまだ不明ですし、抗体の持続期間も不明です。いずれにしても、抗体陽性ということは、感染した後に抗体≒免疫を体内に形成していることを意味します。なお、予防用のワクチンは、病原体の成分の一部(感染発症させる力はない)を接種し、抗体を体内に形成させるものです。COVID-19でも、ワクチンが早期に実用化されることを期待しましょう。
(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)