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2020.04.27 病原体

【Q&A】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗体検査が話題になっていますが、その意義と今後の展望について教えてください 著者:渡辺 彰

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗体検査の話題が多くなっています。ニューヨーク(以下、NY)では約3,000名の市民の13.9%が抗体陽性であり、発表されている感染者数の10倍は市民が感染しているようだと言われています。また、日本でも抗体価測定キットの承認へ向けて献血を利用した検討が始まりました。それらの意義は何なのでしょうか? 今後の感染の広がりや社会活動に関する展望はどうなのでしょうか?

最初に確認しておきたいことが2つあります。抗体検査は、病原体に対するヒトの免疫で重要なIgGやIgMなど血中の免疫グロブリンを測定するものであり、ヒトの免疫機能の全てを表してはいませんが、免疫の最も主要な部分を表していると言ってよいでしょう。ただ、「抗体陽性=感染しない」の確率はまだ不明ですし、抗体の持続期間も不明です。もう1つ、現在検討中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体価測定キットは開発されたばかりで感度や特異度はまだ不明です。それを確認して承認を受けるための検討が始まったところなのです。ですから、現時点(4月27日)で公表されている成績は大幅に修正される可能性もありますが、これまでの成績を基に以下、お話を進めます。

今回、無症候ながらSARS-CoV-2に対する抗体が陽性だった市民は、NYで一般人口の13.9%、NYより感染者が少ないカリフォルニアでも4.1%だったとされています。実際、COVID-19の発症者に濃厚接触した方々のPCR検査(SARS-CoV-2だけが持つ遺伝子配列を検出)で多数の無症候感染者が見い出されています。いずれにおいても、感染しながら発症せずに免疫を形成したと考えられますが、こうした方々が増えてくれば感染の広がりは抑制されます。いわゆる集団免疫ですが、これから実用化されるワクチンの接種者をも含めて抗体陽性となるヒト≒免疫を獲得したヒトが6割、7割を超える必要があります。行動自粛などがなければ感染爆発→医療崩壊が起きますから、あと1~2年は努力する必要がありそうです。頑張りましょう!

著者プロフィール

渡辺 彰(わたなべ あきら)

東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授
公益財団法人宮城県結核予防会 理事長

日本感染症学会専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授・日本感染症学会理事・日本結核病学会理事長・日本化学療法学会理事長を歴任。2013年、結核医療とインフルエンザ医療に関する貢献で第65回保健文化賞,2017年、抗インフルエンザ薬の臨床開発とインフルエンザ感染症対策の推進への貢献で日本化学療法学会の第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞している。

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編集:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授 渡辺 彰
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