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2020.06.04 病原体

高齢者施設に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を持ち込ませないためのポイント 著者:松本 哲哉

 

高齢者は新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいと言われています。そのため高齢者施設に新型コロナウイルスを持ち込むことは厳に避けなければいけませんので、以下の点に配慮していただくことが重要です。

まず、外部から施設に持ち込まれる経路について考えてみると、施設で働く職員、および面会者などが持ち込む可能性が考えられます。職員は毎日、健康状態のチェックを続けながら、発熱や呼吸器症状など体調不良が生じたらきちんと休むことが必要です。症状だけで新型コロナウイルス感染症と判断することは困難であり、特に発症してまだ時間が経過していない場合は軽い症状しかみられない場合もあります。そのため、単なる風邪だと思い込んで勤務を続けることは施設内に感染症を持ち込んでしまう可能性がありますので、注意が必要です。

最近では、職員の家族が発熱した場合の対処法について質問されることが多くなりました。一般的に、同居している人が発熱したというだけでは、勤務を休むべき状況とは考えにくいと思われます。もちろん、同居者の新型コロナウイルス感染が確定した場合は自宅待機が必要ですし、なんらかの症状が認められた場合はPCR検査を積極的に受ける必要があります。

施設に感染症を持ち込むもうひとつの経路は面会者が考えられます。特に感染の流行地域では、入所者のご家族であっても特別な事情が無い限りは面会を控えてもらう必要があります。もし面会を許可する場合でも、体温測定や体調不良の有無の確認は欠かせません。

なお、施設に出入りする外部の業者の方であっても、感染を持ち込む可能性は否定できません。訪問マッサージなどのサービスを受ける場合でも、事前に体温チェックを行い、必要最低限に留めてもらうようお願いする必要があります。

なお、施設の入所者が外出や外泊する際には、いわゆる3密を避けてもらうようにすることが重要です。

施設における感染対策を徹底させるために、職員同士で話し合って具体的な取り決めを行い、マニュアルの作成や周知徹底を努めて下さい。

(著者:国際医療福祉大学医学部感染症学講座 主任教授 松本 哲哉)

※4月21日掲載記事、再掲載

 

著者プロフィール

松本 哲哉(まつもと てつや)

国際医療福祉大学医学部感染症学講座 主任教授
国際医療福祉大学成田病院感染制御部 部長

日本感染症学会専門医・指導医、インフェクションコントロールドクター。日本環境感染学会副理事長、日本化学療法学会評議員、日本感染症学会評議員などを務める。主な著書に、「介護スタッフのための 高齢者施設の感染対策」(ヴァンメディカル刊)など。

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編集:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授 渡辺 彰
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自治医科大学附属病院 感染制御部長,准教授,病院長補佐,患者サポートセンター長(兼任),感染症科(兼任)科長,総合診療内科(兼任)副科長,栃木地域感染制御コンソーティアム TRIC’K 代表世話人 森澤雄司 編
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