CREは「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae)」、CPEは「カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(carbapenemase-pruducing Enterobacteriaceae)」の略語です。
最初に、腸内細菌科細菌について解説したいと思います。「腸内細菌」と「腸内細菌科細菌」は異なります。腸内細菌はヒトの消化管に共生している微生物の集団のことです。そして、そのほとんどがバクテロイデス属を代表とした偏性嫌気性菌(酸素がない状況でのみ生育できる細菌)です。一方、腸内細菌科細菌は「グラム陰性桿菌である」「通常の培地でよく発育する」「通性嫌気性菌(酸素の有無にかかわらず生育できる細菌)である」「ブドウ糖を発酵する」などの条件を満たす細菌のグループです。腸内細菌科細菌にはクレブシエラ属、大腸菌、セラチア属、プロテウス属、サルモネラ属などが含まれます。実際には、大腸に生息している細菌のほとんどがバクテロイデス属を代表とした偏性嫌気性菌であり、大腸菌などの腸内細菌科細菌は全体の1%にも満たないのです。腸球菌はグラム陽性球菌なので腸内細菌科細菌ではありません。また、緑膿菌はブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌なのでやはり、腸内細菌科細菌には属さないのです。
CREはカルバペネム系薬に耐性となった腸内細菌科細菌のことです。腸内細菌科細菌というからには、クレブシエラ属や大腸菌など様々な細菌が含まれますが、実際にはCREの多くは肺炎桿菌であり、次いで大腸菌です。これらはカルバペネマーゼというカルバペネム系薬のみならず、フルオロキノロン系薬やアミノグリコシド系薬などの他の抗菌薬も不活化する酵素を出しているのです。
カルバペネマーゼは1種類ではなく、複数の種類があります。米国ではKPC型、欧州ではOXA-48型、そして、インドやパキスタン地域ではNDM型が報告されています。これらは地域のみで限局していることはなく、他の地域にも拡散しています。KPC型は米国では最も頻回にみられるカルバペネマーゼですが、現在は欧州、アジア、南米でも増えています。NDM型はアジア、欧州、北米、オーストラリアでも報告されるようになりました。OXA-48型はトルコで最初に報告されましたが、現在は欧州、中東、北アフリカでも報告されています。日本ではIMP型メタロβラクタマーゼが多く報告されています。