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2023.08.07 病原体

2023年のこどもの夏かぜの流行状況と対応方法 著者:森岡 一朗

 

昨年の2022年夏は、新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症、手足口病、ヘルパンギーナ、アデノウイルス感染症の同時流行という前代未聞の状況になりました。では、2023年の今年はどうなっているのでしょうか?

■2023年の流行状況

今年、2023年の夏は、手足口病こそ流行は非常に小さかったものの、2022年と同様かそれ以上に新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症、ヘルパンギーナ、アデノウイルス感染症が同時流行しています。全国の小児医療は逼迫した状況になっています。新型コロナウイルス感染症が5類感染症になり、人の移動や感染対策の緩みが原因ではないかとの考えもありますが、昨年も同様の大流行を考えると、これらの夏かぜは毎年起こると考えておくほうが良さそうです。

共通して言えることは、これらはすべてウイルス感染症になります。すなわち、集団生活などで、飛沫・接触感染によって容易に流行します。例えば、保育園や幼稚園では、昼寝や食事、遊びなど濃厚接触する機会も多いですし、乳児にいたっては、床を這う、何でも舐め、口にいれます。もちろん、正しいマスクの装着や適切な手洗いなどの基本的な衛生対策が十分にできないということもあります。また、患児自身はほぼ症状が消失してもウイルスを排出していることがありますので、症状回復後すぐに登園した場合、ウイルスが周囲に伝播してしまう可能性があります。

対応方法

対応は、これらのどのような感染症であっても、経口摂取(哺乳)ができ、普段通りに眠れたり、遊べたりできれば、緊急の受診は必要なく、翌日などにかかりつけ医に受診するようにします。発熱した場合も市販薬を含めた解熱剤を適宜使用して経過をみることができます。その一方、経口摂取(哺乳)の低下、尿量の低下、顔色不良、呼吸状態が悪い、ぐったりしている、けいれんなどの症状がある場合は、重篤な合併症を引き起こしていることがありますので、速やかに医療機関に連絡し、小児科の受診が必要となります。

(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)

著者プロフィール

森岡 一朗(もりおか いちろう)

日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授

日本小児科学会小児科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期(新生児)専門医・指導医。日本小児科学会の理事、日本新生児成育医学会の理事・予防接種感染対策委員長を務める。専門は、新生児・小児感染症、新生児医学、小児の成長・発達。これらに関する英文学術論文を多く発表している。主な著書に、日常診療と看護ケアのためのNICU感染対策(ヴァンメディカル刊)、新生児学テキスト(メディカ出版刊)がある。

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