2020年からの日本での新型コロナウイルスの流行により、小児の感染症の発生動向は毎年大きく変化しています。2020年は、毎年必ず流行していたRSウイルスや夏かぜの代表であるプール熱、手足口病、ヘルパンギーナは全く流行しませんでした。2021年は通常と異なる5月からRSウイルスの大流行が起こりました。では、2022年の今年はどうなっているのでしょうか?
今年、2022年の夏は小児の感染症の発生動向は大きく変化しています。
新型コロナウイルスがオミクロン株になり、小児への感染が増えています。同時に、従来は無症状が多かったのですが、発熱や上気道炎症状が現れるようになりました。また、熱性けいれんやクループ症候群、急性脳症や心筋炎のように中等症や重症例が発生しています。RSウイルスは、6月ごろから中部・近畿地方を中心に大きな流行が始まり、全国へ拡大しています。同時に、RSウイルス感染症と症状が似ているヒトメタニューモウイルスも一部の地域では流行が6月から起こっています。そして、今年は毎年夏季に流行している手足口病とヘルパンギーナ、アデノウイルス感染症が増加しています。このように、2022年夏は、新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症、手足口病、ヘルパンギーナ、アデノウイルス感染症の同時流行という前代未聞の状況になっています。これらは臨床症状から鑑別することは難しいことがよくあります。
このような状況であり、2022年8月上旬時点で、全国の小児医療は逼迫しています。これらのどのような感染症であっても、経口摂取(哺乳)ができ、普段通りに眠れたり、遊べたりできれば、緊急の受診は必要なく、翌日などにかかりつけ医に受診するようにします。発熱した場合も市販薬を含めた解熱剤を適宜使用して経過をみることができます。その一方、経口摂取(哺乳)の低下、尿量の低下、顔色不良、呼吸状態が悪い、ぐったりしている、けいれんなどの症状がある場合は、重篤な合併症を引き起こしていることがありますので、速やかに医療機関に連絡し、小児科の受診が必要となります。
(著者:日本大学医学部小児科学系小児科学分野 主任教授 森岡 一朗)