ある疾患に対して複数回数のワクチンを接種する必要がある場合、規定の回数一貫して同一のワクチンを用いる場合と、製剤名や製造メーカーの異なるワクチンを接種する場合があり、後者を「交互接種」と呼びます。
新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)について、わが国では2022年2月14日時点では2つのメーカー(ファイザー社、モデルナ社)が製造するmRNAワクチンの使用が可能です。mRNAワクチンの原理とこれまでの海外での使用経験から考えて、先にファイザー社製あるいはモデルナ社製のワクチンで2回の接種を済ませた者が、それぞれ異なるメーカーのワクチンで追加接種を行うこと(交互接種)は問題ないとされています。先にアストラゼネカ社製のウイルスベクターワクチンで2回の接種を受けた者が、ファイザー社製あるいはモデルナ社製のmRNAワクチンで追加接種を行うことも可能です。新型コロナワクチンの追加接種については、適切な時期に行うことが最も重要であり、このような運用規定が定められています(1)。
交互接種を行った場合の有効性については、英国での研究によれば、ファイザー社製またはアストラゼネカ社製のワクチンで2回の接種を済ませた30歳以上の者に対して、ファイザー社製またはモデルナ社製のワクチンで追加接種を行った場合、どちらも抗体価は良好に上昇しました(1)。
安全性については、海外の多施設研究において、新型コロナワクチンの交互接種を行った場合の追加接種後の体調不良の出現は、初回シリーズで報告されたものと同程度でした。また、追加接種に用いたワクチンが交互接種だった場合と同一ワクチンだった場合で、体調不良の出現は同程度でした(1)。
これまで国内の他のワクチンでも、B型肝炎、日本脳炎、四種(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)混合ワクチンなどで交互接種が実施されてきました。海外でも同様です。新型コロナワクチンの3回目接種については、以前に接種したワクチンの種類にかかわらず、ファイザー社製・モデルナ社製どちらのワクチンでも、適切な時期に接種を計画していただければと思います。
(著者:川崎医科大学小児科学 教授 中野 貴司)
〔文献〕
(1)第27回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(2021年12月16日)資料1.
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000868349.pdf